部屋の中から発掘された『BEST OF アニメージュ アニメ20年史』(アニメージュ増刊編集部編)を見ながらふと思い出したのが、『ファンロード』1984年11月号の「ゲゲボクイズ」*1に掲載された次の問題である。
29.私が82年2月号からのアニメージュで発見した常連名とは?
- やはりラムを描いていた、16歳のときの一本木蛮
- 手先の器用な河村雅生
- 赤ザクのかえ歌でのってたヒパイスト
- レッシィは、ぼくも好きです。梅本恵美
- あっと驚く筒井雪世
- あの辛口の富野監督にイラストでほめられた神威
- ラムのイラストでのってた!前原直子
- やっぱり湖川きゃらを描いていた橋本美華
- 影山しげのりに「てっけつ」と言われた鉄血
- 常連ではないが、ミンキーモモ論文で登場の素子姫
- 連続掲載記録更新中の、駄ブルマンこと私
- 若林徹……ただしボツコーナーで(無理もねーよな)
(駄ブルマンことクエント人の留・赤光)
この問題の意味する処は、著名な『ファンロード』常連投稿者の名前を『アニメージュ』の投稿コーナーで発見したぜ、という内輪受け狙いのネタである。その中に「素子姫」(というのは主に『ファンロード』誌上で使われた当時の新井素子さんの愛称だが)の名前があるのは、だから、新井素子さんがアニメ『ミンキーモモ』*2に関する論文を一般読者に交じって投稿していた、という事実を示していると思われた。
それは本当なのかという疑問がまず生じた。仕事として原稿を依頼されたというならまだ判る。しかし巻末の『アニメージュ総目録』*3にはそのような記事があったことは書かれていない。とするとやはり投稿したものが掲載されたのだろうか。プロの作家がわざわざそんなことをするのが不思議だったし*4、またもしそれが事実だとすれば、アニメに興味のない筈の新井素子さんがなぜ『ミンキーモモ』について書いたのかが判らない。
疑問は膨らむばかりである。とりあえずネットで調べてみたら、「私家版ミンキーモモ事典」というサイトの【新井素子】の項目にまさにその記事のことが書いてあった。
あらいもとこ【新井素子】
*SF作家。若い頃のママ(60話)に似ているといわれた。
*『アニメージュ』1983年5月号の読者投稿欄に、「ノストラダムス大予言」と題する46話についての感想文を発表した人物。SF作家の方と同一人物かは不明。(住所が「千葉県」とあるので別人臭いが……)
掲載号まで特定できてしまった。ありがたい。そして幸運なことに、俺はその号を所持していたのである。「兄悟と素子の採点ノート」というアニメ映画の採点企画に新井素子さんが登場していたため、以前に古本で入手していたのだ(→【新井素子研究会】:『アニメージュ』1983年5月号)。
早速確認してみると、「My Animage」という読者投稿ページの「レタールーム」欄P.138に、確かに「ノストラダムス大予言」と題された文章が掲載されていた。投稿者の名前はこのように書いてあった。
千葉県・新井素子(23)
常連ではないが、ミンキーモモ論文で登場の素子姫
との「ゲゲボクイズ」の記述は、この投稿のことを指しているのだと思われた。
結論から言えば、これはSF作家の新井素子さんとは別人だろうと思う。「私家版ミンキーモモ事典」でも指摘されている通り、住所が「千葉県」とあるのはおかしい。また年齢も23歳とあるが、8月に誕生日を迎える新井素子さんはこの時まだ22歳だったのであり、これもおかしい。投稿者がたまたま同姓同名だったのか、それとも何かの意図があってこう名乗ったのか、はたまた単に編集部の誤植だったのか、とか疑い出すときりがないが、さすがにそこまでは調べることはできない。新井素子さんが『ミンキーモモ』について他に言及している例が見当たらないことや、文章の調子や論理構成が新井素子さんの書くものと違うように思われるという主観的な理由からも、別人であると結論付けたい。
ようやく長年の疑問が解けて、とてもうれしい。