2015年6月の読書記録

読んだ本の数:16冊

辞書を編む (光文社新書)

『辞書を編む』というタイトルで『舟を編む』を思い出した人にはぜひ読んでもらいたい本。『三省堂国語辞典』の編集委員である飯間氏が第七版の刊行に取り組む時系列に則した形で編纂者の考えと国語辞典がどのように作られるのかを語る。本文中には『舟を編む』に纏わるエピソードも登場する。
この本の刊行が2013年4月で『三省堂国語辞典』第七版の刊行が2013年12月。本の中では編集作業の真っ最中のその辞書を傍らに置き本文中に登場する単語を引きながら読むと臨場感があってまた面白い。久しぶりに長時間辞書と向き合って単語への興味が連鎖して行くのが楽しかった。辞書の性格を知った上で利用するのも興味深い体験である。辞書は言葉の正確な意味を知るための道具だと思っていたから各辞書の性格なんて今まで考えたこともなかった。『三省堂国語辞典』を手許に置きたくなる。
「しょっぱい」の隠語的意味も載ってたのが個人的に好感を持った。次の版では「塩」の意味も追加されるだろうかと興味が続く。
読了日:6月29日 著者:飯間浩明

辞書を編む (光文社新書)

辞書を編む (光文社新書)

三省堂国語辞典 第七版

三省堂国語辞典 第七版

大奥 (12) (ジェッツコミックス)

徳川治済の怪物ぶりはこの巻でも圧巻。台詞で表情が見えないと思ったら次のページのあの顔。恐い。そしてついに赤面疱瘡との戦いに終止符が。黒木や伊兵衛があの聡明な人たちを思い出したように俺も感慨に浸った。将軍家斉と御台所の関係も泣かせる。愛は戻らなかったけれどもお互いのことは解り合っていたのだと思う。シーボルト事件のこと、これ高橋景保に関しては新解釈なんだろうか。で、いよいよ黒船が来た。次巻も楽しみだ。
『大奥』に関しては読むたびにいろんなことが頭の中を駆け巡って果ては胸中に溜まったまま燻ったりするんだがそれらを詳らかに言葉にするだけの文才が俺にはあまりにも無い。
読了日:6月26日 著者:よしながふみ

大奥 12 (ジェッツコミックス)

大奥 12 (ジェッツコミックス)

たいようのいえ (13)<完> (KCデザート)

物事の終わりはまた新たな始まりであって生きていく限りそれが連綿と続いていくので禍福は糾える縄のようだと言うけれどもせめてこの幸せは長く続きますようにと祈らずにいられない。特に大樹にはいいことがありますように。
読了日:6月24日 著者:タアモ

たいようのいえ(13)<完> (KC デザート)

たいようのいえ(13)<完> (KC デザート)

剣と紅 戦国の女領主・井伊直虎 (文春文庫)

傑作。超傑作。
やられた。久しぶりに没入した。すごいよかった。
思い返すとため息が出るし最後の処を読み返すたびに胸がきゅーっとなる。
やばい。まじ傑作。
これを読んでると今川氏が憎くなる。「滅亡」の文字が出た処でざまみろと思った。
読了日:6月23日 著者:高殿円

江口寿史の正直日記 (河出文庫)

この言葉を帯の惹句に軽々しく使っていいものなんだろうかと軽い戦慄を覚えた。それすらも自虐芸なのかも知れず内容を端的に表現するという意味ではこの本には最もふさわしいと言える。このダメさ加減には普遍性がある。読んでると胸に染みてきて笑いながら泣いてしまう感じ。漫画が読みたいです。
俺はディープな江口ファンじゃないけど樋口毅宏が解説で引用した『すすめ!!パイレーツ』のフレーズは全部頭の中に絵が浮かんできた。この解説はよかった。
読了日:6月18日 著者:江口寿史

海街diary (1)-(6) (flowersコミックス)

気にはなっていたものの読んでいなかった作品を映画化を期に読んだ。途中で読むのをやめることのできない面白さで一気に読んでしまった。続きも気になる。
すずの進学先として掛川にある架空の高校が登場する。果たして彼女の選択は。
(1) 蝉時雨のやむ頃
(2) 真昼の月
(3) 陽のあたる坂道
(4) 帰れない ふたり
(5) 群青
(6) 四月になれば彼女は
読了日:6月15日 著者:吉田秋生

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

isbn:4091670377detail
海街diary 3 陽のあたる坂道 (フラワーコミックス)

海街diary 3 陽のあたる坂道 (フラワーコミックス)

海街diary 4 帰れない ふたり(flowers コミックス)

海街diary 4 帰れない ふたり(flowers コミックス)

海街diary(うみまちダイアリー)5 群青 (flowers コミックス)

海街diary(うみまちダイアリー)5 群青 (flowers コミックス)

王妃の帰還 (実業之日本社文庫)

本文中に「新井素子」という単語が出て来る小説。単行本版で既読だが文庫版が出たので再読。学級内権力闘争に巻き込まれる女子中学生たちの戸惑い悩み傷つきながらも成長していく姿を瑞々しく描き出した佳作で数々の波乱の後に辿り着いたラストシーンのまばゆさには神聖さすら覚える。わたしゃどうもここに描かれた派閥とか人間関係の機微とか心理の綾とかがよく判らんのでそういうもので一杯の海を懸命に漕ぎ渡ろうとしている彼女らの姿に却って感動を覚えるのだと思う。これ面白いっす。
読了日:6月11日 著者:柚木麻子

王妃の帰還 (実業之日本社文庫)

王妃の帰還 (実業之日本社文庫)

さらば国分寺書店のオババ

椎名誠の語る国分寺書店のオババの追想に書店従業員としての自分を重ね見る。日頃自分はどうすべきなのかと考えていたことと重なる部分もありそうだそうだと思う自分とそれはたしかにやり過ぎではと思う自分がいる。ただ根底には圧倒的な共感がある。老婆は死なず、ただ消え去るのみ。
読了日:6月7日 著者:椎名誠

さらば国分寺書店のオババ

さらば国分寺書店のオババ


新井素子」という単語が出て来る本を知りたいというツイートに『さらば国分寺書店のオババ』はどうかと見ず知らずの人からリプライを頂いたので三五館版を図書館で借りて読んだのだった。結論を言えば本文中には出て来ない。なんだこのアドバイス罪案件は、とかなりがっくり来た。
しかし、である。ググってみるとクリーク・アンド・リバー社が刊行した電子書籍版(「椎名誠旅する文学館シリーズ」)の巻末に椎名誠目黒考二の対談が収録されており、その中で新井素子さんへの言及があることが判った。この対談はwebで読める。

椎名 そのときの奇想天外の新人賞を受賞したのが新井素子さんだ。

旅する文学館|椎名誠の仕事(聞き手 目黒考二)|『さらば国分寺書店のオババ』その6]

椎名誠が応募した1977年の第1回奇想天外SF新人賞で佳作となった5編の内のひとつが当時高校2年生だった新井素子さんの「あたしの中の……」だった。名前が出るてことはその後の活躍も含め印象に残っていたのかなと。
とこのようなことをググるきっかけになったのでリプライを頂いたことには感謝している。ついでに言えば『さらば国分寺書店のオババ』の刊行は1979年で三五館版P.27には「一九七七年に入ってから、急にキチガイ的に、この車内アナウンスがやかましくなってしまったのである。」とあるから第1回奇想天外SF新人賞が行われた頃の東京郊外の様子やその他諸々が一人の男性の目から語られるという新井素子的な興味からも読める。電子書籍版はKindleやその他の電子書店でも販売しているのでチェックしてみるとよろしいかと。

図書館戦争 LOVE&WAR (15) (花とゆめコミックス)

ついに本編完結。描き切った、と思った。原作よりも更に恋愛成分多めで読んでいてデレデレになる場面が多かったがむしろそれがよかった。楽しく読んだ。連載が始まったのが7年前と書いてあったけどそんなに前か。なんかあっという間だったような気がする。
デパートの人らの対応がすごい泣ける。原作でも泣いた。『通りすがりのレイディ』であゆみちゃんが番組ジャックした後にレイディ捜索の協力者が続出して「あたし、日本人て、好きよ」とか何とか言ってたけど、まさにあんな感じと気分。
『別冊』はやっぱり1巻からてことになるのかな。楽しみ。
読了日:6月5日 著者:

図書館戦争 LOVE&WAR 15 (花とゆめCOMICS)

図書館戦争 LOVE&WAR 15 (花とゆめCOMICS)

リライブ (ハヤカワ文庫JA)

一冊の本にまつわる複雑怪奇な時間SF四部作、これにて終幕。前三作の謎解きを期待して挑んだもののこちらの想像を軽く超えて押し寄せる物語に未だ理解できていない部分も残る。しかし拘りの形式美に魅せられてラストシーンでは深い感動に包まれた。傑作。
ほぼ静岡県内が舞台となっている「静岡SF」なので静岡県民は読むと良いと思う。あと本が好きだったり『時をかける少女』が好きな人はぜひ。『リライト』『リビジョン』『リアクト』『リライブ』を一気に読むのがおすすめ。(そして読み返したくなるのさ)
読了日:6月4日 著者:法条遥

リライブ (ハヤカワ文庫JA)

リライブ (ハヤカワ文庫JA)