久美沙織『もう一度だけ新人賞の獲り方おしえます』。

ハウツー本の第二弾。やはり新井素子の名前が登場している。
「第五回 話主[設定]」の章の「[2]主人公が語り手=一人称の場合」P.95,96。

 なぜなら、普通ひとは、自分がよく知ってることについては、いちいち語ったりしないからです。まして、波瀾万丈の目にあってる途中には、ややこしいくだくだしいコトガラを説明しているヒマがあるわけありません。新井素子さんの初期の一連の、とりあえずドタバタドンパチがあって、フッと主人公がヒマになった時に「そうだ、いまのうちに説明しておくね、あたし○野○子、○○歳……」は、彼女が生み出した彼女独自の回答なのですから、いくら便利だからといって、真似っこしてはいけません。

脚注では『通りすがりのレイディ』が例として上がっている。
次に「第七回 描写と説明[データ]」の章の「材料と道具がそろったらイザ料理!」P.149。自著を材料に書き方の解説をしている箇所である。

 中で一番ハズカシイのが、「あたし、阿部まさの、メス……」とかってヤツですね。素子ちゃんのモロ真似ですね。すみません。やっちゃいかんとひとにサンザン言うようなことを、なんと自分でもやっていたのでございます。ンでも、少なくともこの頃はまだサシモの素子ちゃんも、その後ほど有名じゃなかったのです。「あんまり人に知られていない手法」だと考えて、ズルいことに口を拭って真似っこをしたんでごぜえますが。いやー、セコい。楽チンをすると、後々、こうして恥をかくんだなぁ。

「ダーティ・チェリー・ブルース」(『プラトニック・ラブ・チャイルド』所収)の書き出しについての反省の弁。新井素子の真似はやっちゃいけない、と2回出てくるのは見た通りだが、気に病んでいたのだろうか。
あと、新井素子と直接は関係ないが、「第六回 三人称の視点の問題[設定]」の章P.129、

三人称の話主と作者は別人であるという自覚を忘れるな

というアドバイスが書かれている。まあ、だいたいの時はね。