神代明『世界征服物語 ユマの大冒険』。

読了。いわゆる「ライトノベル」と呼ばれるジャンルをほとんど読まないので、新井素子が選んだ「ライトノベル」作品とはどんなものだろうという興味から読んでみた。
最後まで世界に入り込めなかったのは俺の好みもあるんだろう。しかし、細かい部分の書き込みの足りなさが気になる。導入部の訳わからなさもそうだし、状況説明がなされないまま話が進むのが不満である。つっかかって前の部分に戻り、「やっぱ書いてないな」と確認してまた先に進むというような手間のかかる読書になった。まあ、物語のおもしろさがそういう細かい部分へのこだわりを吹っ飛ばしてしまう作品に出会うこともあるのだが、今回はそこまでのパワーを感じなかった。
ちなみに、新井素子さんの選評はこんな感じ。

世界征服物語』。有体に言ってしまえば、これ、私にとって、一おしだった。けど、同時に、ちょっと……という作品でもあり……。
センス、ストーリーテリングは、とてもいい。選考に残った人の中で、次回作を読みたいと思わせることに関しては、おそらくこの作者が一番だろう。
それでも私が「ちょっと……」と思ったのは、そして、今回、賞をとった以上、あえて苦言を呈するとすると……作者は、原稿、書き殴っていないか?
候補作中、誤字脱字の数は一番、ひとりよがり、読者を無視して勝手に作者だけが判っている文章も一番。
勿論、こういう欠点は、編集者や校閲者がついてくれれば直る。だが、その前に、推敲さえすれば、直る筈のものなのである。
作家というのは、他人が、お金を払ってまで読んでくれる文章を書く商売である。ならば、こういう文章を書いてはいけない。
つまり、あなたが問われているのは、“お金を払って読んでいただく文章を書く気構え”なのである。

【引用】「第1回スーパーダッシュ新人賞結果発表」新井素子の選評

個人的には高橋良輔の選評に非常に共感を覚えた。「ああ、こういうのもありなんだなぁ。でも…」というおじさんの弱音は俺の実感でもある。