新井素子「ネプチューン」。

3月18日に買い直したのでまた読んでみた。『今はもういないあたしへ…』所収の中編SFである。
この作品を初めて読んだのは『SFマガジンセレクション1981』だった。星雲賞を受賞したことで名前だけは有名だったのだが当時は新井素子のどの本にも収録されていなくて、「SFマガジン」で読み逃していた俺は読むことができなかったのだ。この本が出た時は非常に喜んだ覚えがある。
初めて読んだ時は最後のシーンで感動したものだが、今読み返すと同じ場面で背筋が寒くなったのには我ながら驚いた。この思い込みの強さは怖い。あまりに強い思い込みは歯車の噛み合わせが一つずれるだけで容易に狂気に転じるというのは新井素子さんの得意技な訳で、このシーンはそれが寸止めで終わっているだけのように思えてしまったのである。改めて読み返してこんなに違う印象を受けたのも珍しい。昔の作品をまた読み返したくなった。