水上勉『一休』。

ようやく読了。谷崎潤一郎賞を受賞した評伝文学の傑作、というのが予備知識。作者の描き出す狂雲子一休宗純の生涯は非常に人間くさく、また森女との交歓など生きることの呻吟と喜悦がよく表現されていると思うのだが、どうもいまいちピンと来ない。作者と俺の興味の方向が明らかにずれているからである。一休の人間くささよりも、一休が悟った悟りの実践としての生って何かもうちょっと書くことがあるんでないの、という欠落感が読了後に生じた。俺の興味の延長線上にある本ではないのでこれは仕方がない。歴史的背景が文献を引いて事細かに記されているのは非常に勉強になった。また一休の行実を記述する上で作中の重要な位置を占める作者による偽書『一休和尚行実譜』(作中では磯上清太夫の作となっている)もわざとらしくはあったが物語に色を添える趣があり楽しかった。
しかし本来の目的であるアントニオ猪木の得意技「道」の出典などを作中に見つけること叶わず。そんなに期待していた訳じゃなかったけどね。謎は深まるばかりですって感じ。

関係ないけど、K-1の武蔵って、なんと蜷川新右衛門さんの子孫らしいよ。

その割にはアゴが割れてないじゃねーかっていやそれはアニメだし。記事の出所が報知新聞っぽいのが微妙な感じ。