女子レスリング、終わる。

72キロ級の3位決定戦が終わった後の浜口京子のさわやかな笑顔を見て、何か救われたような思いがした。
浜口京子のことはアニマル浜口の娘として彼女がレスリングを始める前、中学生の頃から知っていた。アニマル浜口のあの性格がみんなに好かれたのと、カレーちゃんこが名物の飲み屋を営む奥さんが評判を呼んでいたこともあり、当時のプロレス雑誌にはたまに父親絡みの話題で彼女の記事が載っていた。父親とともにボディビルを始めたこと、父親と同じくプロレスラーになろうと思ったこと、その前にレスリングで頂点を目指すことに目標を絞ったこと、などを記事で読んだ。プロレスが好きな者として仲間意識のようなものを持ったし、なんか親戚の女の子を応援するような気分にもなっていたのである。女子レスリングの強豪に成長し、世界で活躍する彼女の姿はとても誇らしかった。今回の大会は、その彼女の夢が叶うはずの場所だった。そして結果は準決勝敗退。周りが期待し、本人も心から望んでいたであろう金メダルには手が届かなかった。信じられないというように彼女の顔はこわばっていた。見ていた俺の落胆も大きかった。勝負なんだから一方が勝ち、一方が負けるのは当然だ。しかし、これはないだろう、と。勝利の女神はなんと非情なのだろうか、と。
それでも彼女は笑っていた。相手を下し、銅メダルを決めた彼女の顔は晴れやかだった。決勝に進めなくて気持ちが切れていやしないかと心配したこちらの当惑など、どこかに吹きとんでしまうようないい笑顔だった。だから、負けた悔しさは悔しさで置いとくとして、今回は心から「おめでとう」という言葉を贈りたい。よくやった、浜口京子
一方的な思い込みを語ってしまって申し訳ない。少し感傷的になっている。