いしかわじゅん『東京で会おう』。
ギャグ小説。漫画とか作家とかの固有名詞がたくさん出てくる中に新井素子さんの名前も出てくる。P.48-49より抜粋してみる。
私は原稿用紙を真中から折り曲げ、ごしごしと擦ってから、もう一度開いた。折り目を中心に、左右対称の模様ができていた。人間が両手を拡げて、慌てて走っているようにも見えた。
「うーむ……、対談に遅刻しそうになって、慌ててゲロのついた髪で走っている、寝起きの新井素子……かな」
机の抽斗を開けて、私は本を取り出した。
【角川新書 誰でもできるロールシャッハ】
私は「た」の項を引いた。
「一五二ページ……、た、た、た、対談……〈対談に遅刻しそうになって、慌ててゲロのついた髪で走っている、寝起きの新井素子、と答えたあなたの場合〉なになに……」
《あなたは少し疲れていますね。仕事の引き受けすぎです。しかし、受けてしまったものは仕方ありません、なるべく落とさないように気をつけてがんばりましょう》
「……当たっている」
なかなかひどい登場のさせ方ではある。新井素子さんといしかわじゅんは個人的な知り合いだが、新井素子さんからクレームが付いたりしなかったんだろうか。これに類する事実があったかどうかは定かでない。
- 『東京で会おう』,いしかわじゅん,角川文庫,ISBN:404179501X