1981年のインタビュー。

引き続いて進行しているサイトリニューアル作業中に、ふと目に留まった『小説ジュニア 1982年2月号』の新井素子インタビューを読み返してみた。興味深い発言があったので抜き出してみる。

――理想の作家像はありますか。

新井 あんまり売れてなくて、本屋さんに行って「新井素子の本あります?」って聞いたら、本屋のおじさんがちょっと沈黙してね、「ああ、新井素子、あの隅に一冊あったような気も……」って。それで隅に行くと一冊ぐらいはあるという、あまり有名ではないけれど完全に無名ではない、何とか一人生きて行ける程度の収入が入るぐらいには売れて、それ以上は売れない。そして、時々、思い出したように書き下ろしの注文が来て……、って感じの作家がいいですね。第一、売れたら母親が卒倒しちゃうし、ボーイフレンドと腕を組んで歩いてるところをうしろから、「新井さん」なんて言われちゃうと恐いですものね。

実際はこの後ベストセラー作家になってしまった訳だが(御母堂は卒倒しなかっただろうか)、今の新井素子さんの執筆状況は、ここで語っている理想に近いように感じてしまった。この『小説ジュニア』は1982年1月発売の雑誌なので、インタビューが行われたのは1981年中である可能性が高い。この年はデビューしてから4年目、立教大学に在学中で、コバルト文庫から『星へ行く船』、フタバノベルズから『ひとめあなたに……』を上梓している。『通りすがりのレイディ』がこの号とほぼ同時に発売されたばかりという状況であり、まだ人気が沸騰するには到っていない時期のことである。