『奇想天外』の新井素子さん。

何の計画性もないままなんとなく1980年の『奇想天外』誌を読んだ。本当はその前に『サブカルチャー文学論』を読み終わらせなければならないのだが、興味もないし話にもついて行けてないので読むのが億劫で仕方がないのである。だから思わず逃避してしまう。
で、『奇天』を読めばやはりちらほらと新井素子さんの名前が出てくるのであった。12月号に掲載された奇天版『グリーン・レクイエム』の1ページ広告は、奇天版『あたしの中の……』の著者近影よりもさらにソフトフォーカスが濃くかかった、ほおづえをついて眼鏡無しの瞳から視線を所在なげに漂わせる20歳の新井素子さんのポートレートである。

緑の髪の少女――この世にあり得べからざるものを見ながらも、不思議と恐怖はわいてこなかった。……少し丸い顔、大きなあどけないひとみ、まっ白な肌、舌たらずな口調。そして、その深緑の髪は、息をしてはいけないと信彦に思わせる程、美しかった。……

幼い日の記憶を軸に展開する異星の少女とのむくいられぬ恋。……

新星新井素子が、十代との決別の思いをこめて書きあげた文芸SF!

そんな写真にこんな宣伝文句が付いてくるのだから、当時のSF青少年は心中穏やかでなかったんではないかと推測するものである。よく判らんけど著者のポートレート付き広告が出たSF作家って他にいるのだろうか? この頃の『奇天』で新井素子さんは小説を発表する以外に「コンピュータ・エイジを考える」という対談を1年間に渡って行っている。著者のキャラクターを立てて売り出すという方法は故意か偶然か判らないが、すっかり特別扱いというかもっと言えばアイドル化していることはよく判る。
この広告はポスターとか新聞とかで使われたのだろうか? また朝日新聞の縮刷版でも当たってみるか。