黄金時代。

こないだ静岡市に行った時に久しぶりに本屋巡りをしてみたのである。きっかけは吾妻ひでおの『失踪日記』だ。駅から一番近い戸田書店に行ったら、四階の漫画売り場でいくら探しても見つからず、店員さんに確認してもらったら一階の新刊コーナーにメンタルヘルスの本に混じって置いてあってびっくりしたのだ。漫画コーナーに置いていなかったのが納得が行かず、それでは他の本屋ではどうだろうかと確認してみたくなったのである。同じ通りの並びには江崎書店と谷島屋書店という古株が存在する。そちらに久しく行っていなかったことも廻ってみようと思った理由の一つである。
行ってみて驚いたのは『失踪日記』を置いていなかったことでなく、いやそれもそうなんだが、それぞれの店舗の凋落ぶりであった。江崎書店本店なんて、俺が中学時代におのぼりこいのぼりで静岡に来た時*1、あまりの本の多さに目が潰れるかと思った本屋なのに*2戸田書店と比べてしまうと商品の数で劣勢なのは明らかだ。土曜日だというのにお客さんも少なく、江崎書店てこんなもんだっけと今さらながら呆然としてしまった。なんだかそのまま出るに忍びなく、二階の漫画売り場で桜玉吉の『御緩漫玉日記』第一巻を見つけて買った。次に行った谷島屋は江崎書店より客数は多かったものの、やはり品数は戸田書店に比べると見劣りする。ここでも何か買おうかと思ったが漫画本では欲しい物は見つけられず、店内をぐるぐる回遊した後に結局出てきてしまった。どちらの書店も昔は入ればわくわくしたものなのに、自分の中にある輝かしい記憶との落差に時の流れの儚さを思わざるを得ない。寂しさと無常感が胸に迫る。
買った二冊の漫画本は家に帰って続けて読んだ。今の俺には結構ヘヴィでハードな読書体験でございました。

*1:何の目的で静岡にいたのかは覚えてはいない。

*2:ついでにその時、『グイン・サーガ』の棚の前で女の子が二人「次の新刊っていつ出るのかね〜?」なんて話をしていたものだから、『S-Fマガジン』を読んで次巻が近刊であることを知っていた俺はなけなしの勇気を振り絞り、「次は××月に発売だよ」と横から声を掛けたのである。嗚呼それなのに彼女らにあっさり無視されて、いたたまれなくなって他の本を探す振りをしながらその場を離れたという辛い記憶もあるのだった。確か第17巻『三人の放浪者』が出る前の話だった。書いていても情けなくて泣けてくる思い出である。