田中啓文『笑酔亭梅寿謎解噺』。

新井素子さんが連載エッセイ「読書の缶詰」で紹介していた本(id:akapon:20050219#p1)。
上京する新幹線の中で何を読もうかと考えた時に、読みかけの本や順番待ちしている本ではどうも辛気くさくて慶事には相応しくないように感じたので、順番をすっ飛ばしてこの本を旅のお供に選んだ。落語界を舞台に主人公の成長とミステリ的謎解話が人情味篤く描かれている好著だ。落語の知識が全くない俺が読んでも楽しめた。一見無茶苦茶に見える梅寿師匠が実に愛すべき人物であるのが非常に痛快で、途中でホロリとさせられる場面も何度もあった。収録された短編はいずれを読んでも心がほんのり温かくなるのである。いい本を選んでよかった。
謎解き場面における梅寿師匠と主人公竜二の関係が「ちいさなバイキング ビッケ」の父とビッケを彷彿とさせたのは個人的に笑えた部分である。