ササキバラ・ゴウ『〈美少女〉の現代史――「萌え」とキャラクター』

新井素子さんの名前が本文中に登場するので読んでみた。第2章「世の中はいかにして美少女化したか」内「4 アイドル・ジュニア小説・村上春樹の文学」のP.135とP.136、「ジュニア小説からキャラクター小説」の項に新井素子さんの名前がある。

 小説の世界では、ジュニア小説というジャンルが七〇年代末頃から変化し始めます。七八年に新井素子が本格的に活動を開始した頃から、アニメやまんがの影響を強く受けて書かれた小説が増加し、広い支持を集めます。

 新井素子の作品は女の子の一人称で書かれ、少女まんがやアニメなどの影響を強く感じさせる内容のSFでした。高校生でデビューしたという作家本人のキャラクター性と合わせて、多くの男性読者が新井素子に「萌え」て、ロリコンブームなどと歩調を合わせるよう人気が高まります。

「キャラクター小説」という語は大塚英志がその著書で規定した単語を援用したものだと思われる。また、ここに書いてある少女まんがやアニメなどの影響を強く感じさせるという文も大塚の著書からの援用だと思われるが、具体例も挙げないまま無批判に使用しているのは気になる処ではある。
あと、新井素子さんが本格的に活動を開始したのは1978年と書いてあるが、実際には翌年に大学受験を控えているため「本格的な活動」と言える程には小説は発表されていない。本格的に活動を開始したのは受験による中断期を経た後の1980年と見なすのが適当ではないだろうか。(参考:新井素子全小説リスト

七〇年代に平井が少女の一人称で書いたコメディ調の小説などは、その後の新井素子の文体ときわめて似通っています。それはおそらく、単に新井が文体を真似たということではなく、まんが・アニメ的なコメディセンスを小説に導入するための原型を、平井が先駆的に作っていたのだと考えるべきでしょう。

ここに例示される平井が少女の一人称で書いたコメディ調の小説って何だろう。思い当たるものがない。是非読んでみたいのだが、知る手段はあるだろうか。bk1はてなとかYahoo!知恵袋とか教えて!gooとか、それくらいしか思いつかないのはなかなか情けない。平井和正への失望を口にしたことのある俺が平井和正ファンサイトの掲示板で訊くのは悪いように思うしなあ。まあ探してみよう。