神林長平『膚の下』。

読了。長かった。ハードカバー二段組で約700ページである。読んでも読んでも終わらない。話も長かったが三部作が完結するまでがまた長かった。『あなたの魂に安らぎあれ』の発表が1983年、この『膚の下』が2004年に出版されるまで実に21年の歳月が流れている。もっとも三部作になっているなんてのはこの小説の連載が『S-Fマガジン』で始まってから知ったことだ。『あなたの魂に安らぎあれ』から『帝王の殻』、そして本作へと遡る逆年代記として構想された物語は、地球上に生まれた知性体が滅亡の危機の後250年の間に何を想い、どのように生きたか、また生きようとしたかを描いている。この長さに比例して、自分の中に積もって行った想いが読み終わった今胸の奥に溢れかえっている。神林長平の小説についての感想文にこんなことを書くのは誠にふさわしく無いと思うのだが、その想いはどうにもうまく言葉に出来ない。ただ一つ言えるのは、この物語を読むことができた自分はとても幸せであるということである。読んで良かった。