近藤史恵の小説を読んだ。

『モップの精は深夜に現れる』が新井素子さんの連載エッセイ「読書の缶詰」第5回で紹介されていたので(id:akapon:20050420#p1)読もうと思った。これはシリーズの二作目である。エッセイの中では、

まったく独立したお話だから、一作目を読んでいなくても構わないけれど、(それに、古いノベルスは大変入手しにくいし)、もし、手にはいったら、こちらもお勧め。

と書いておられるので、内容を確認するだけならとりあえず二作目だけでもよさそうだが、個人的にシリーズ物というと最初から読んでみなければ気が済まない質なのである。幸い本屋には一作目の『天使はモップを持って』も置いてあったので二冊まとめて読むことにした。結果的には、最初から読んだことによって二作目のラストにより深く感情移入できたので、よかったと思う。あ、もちろん、新井素子さんが仰っている通り、二作目から読んでも充分楽しめると思うのでご心配なく。
都会のオフィスで働く人たちの身に起こったちょっとした事件にまつわるミステリ連作短編集である。セクハラとか不倫とかいかにもありそうな題材から、職場の人間関係のこじれとか働く人の迷いなどを浮かび上がらせる話が多い。ほろっと心が温かくなるような話や少しやりきれない思いが残る話などいろいろだが、主人公の清掃作業員キリコの明朗快活なキャラクターのせいもあり、読み終わった後に気持ちがすっと軽くなるような気がした。気楽に読めてなかなか楽しめた二冊であった。この話、いいっすよ。

  1. 『天使はモップを持って』,近藤史恵,実業之日本社ジョイ・ノベルス,819円+税,ISBN:4408504092
  2. 『モップの精は深夜に現れる』,近藤史恵,実業之日本社ジョイ・ノベルス,819円+税,ISBN:4408504483