『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』の新井素子登場部分。

NAKAさんのご厚意により新井素子さんに関する記述を拝読した。(g:htnbk:id:mohri氏にはトラックバックを頂いてしまって申し訳ない。ちゃんとした感想は全部読んだら書くのでご容赦を。)なので、読んだ部分について。

おたく世代のアイドルになったりした人だ。

さらっと書いてあるけれど「おたく世代」という言葉が具体的にどの辺りの世代を指すのかがこれだけでは判らないのが引っかかる。新井素子さんがアイドルになった時代というと思い当たるのは二つあって、一つは『奇想天外』でデビューした直後のSF界限定アイドル時代、もう一つはコバルト文庫登場後『ファンロード』でその呼称が一気に広まった「素子姫」時代だ。前者はなんかそうだったらしい、という伝聞でしか知らず、それを伝える資料は手元にはない*1。後者はとりあえず「素子姫の部屋」興亡史を参照のこと。ここで言う「おたく」が限定的にSFファンのことを指すとは考え難いので、その時期に『ファンロード』を読んでいたような人たち(これも漠然としてるけど)を指して一括りに「おたく世代」と呼んだと解釈すればいいのか。
それで思い出したこと。はてなキーワードの「サークルクラッシャー」を読むと、「ウチの姫が」の例として新井素子さんの名前が挙がっているのに違和感を覚えていた。それは例として適当ではないのではなかろうか。「素子姫」という呼称が頻繁に登場した『ファンロード』誌上での新井素子さんと読者(男女とも)の関係というのはまさにお姫様と下々の者であって、例にあるような卑近な関係ではなかったような気がする。芸能界で言えば美空ひばりが周りから「お嬢」と呼ばれていたことと同じような感じ。姫(お嬢)と読者(芸能関係者)は主と従という縦の関係であって、「ウチの……」と気安く呼べる並列な関係ではなかったんではなかろうか。
もっとも「素子姫」という尊称がどこで発生したかというのはよく判らないし、俺はSFファンダムのことを全く知らないので、そういう並列の関係で使っていた人たちを知った上でこのようが記述がなされたのかも知れない。その辺りの詳細は定かではない。

*1:読んだことがあるのはとり・みきの「ニッポン新井素子時代」。本人の証言あり。あとは『ライトノベル☆めった斬り!』の大森・三村対談くらいか。あ、吾妻ひでおSF大会レポート漫画にも「奇天」のガードマンが付いて云々という話があったような気がする。