『バラエティ』1979年10月号。

こういうものを買っているからお金がなくなるのだ。突発的に欲しくなり古本屋で買ってしまった雑誌である。巻頭に「シンデレラ・ギャル'80」という記事があり当時注目の若い女性たちを取り上げているのだが、薬師丸ひろ子や荻野目慶子と並んで新井素子さんの名前もその中にある。この年の新井素子さんは、大学受験のための一年間の休筆の後晴れて立教大学に入学したばかり。ノー眼鏡で白いブラウス*1を着た若々しいお姿の写真が掲載されている。”マンガのアシスタントに秘かにあこがれるおもろい作家”と題されたこのコラム内から本人のコメントを拾ってみよう。

「SFです、という自信がない」
「同い年の友だちを意識して書いた」
坂田靖子猫十字社のマンガが好き」
「1年間、漫画家のアシスタントになりたい。ベタヌリとケシゴムかけとお茶くみならできるのだけど」
「今、吉村昭とE・S・ガードナーを読んでいます」
「探偵小説なんだけど、探偵は酒場でギムレットなんて飲むでしょ。でも私なら、背広とネクタイの探偵がブラウスとスカートの普通の女の人と喫茶店でお茶を飲む話が書きたい」

「自信がない」発言は例の「自称・日本一科学に疎いSF作家」という呼称の別の言い回しだろう。同年代の女性を意識しているというのは20代前半頃まではよく出てくるコメント。坂田靖子の名前はどこかに出てきたかな。覚えがない。猫十字社は『まるまる新井素子』に出てきたような。吉村昭って時代小説とか戦争物を書いている人だっけか? よく知らないが新井素子さんの読書範囲の広さには驚かされる。E・S・ガードナーはペリイ・メイスンシリーズの作者で『カレンダー・ガール』を書いた人。探偵小説ってやっぱりレイモンド・チャンドラーフィリップ・マーロウものとかを指すのだろうか。調べたら長篇第6作目『長いお別れ』の中に「ギムレットには早すぎる。」という有名な台詞が出てくるそうだ。
ちなみにこの特集に登場する女性陣は下記の通り。
薬師丸ひろ子ヒロコ・グレース/荻野目慶子/小池真知子/岡崎格子/加納弥生/斉藤美佳/岡本久美子/河原真由美/久米直子/磯貝恵/蒲田真由美/セーラ/中島はるみ/石川真希/遠藤真理子/横山エミー/キャティタカラヅカ??(研2・研1)/渡辺多恵子新井素子*2
角川書店の雑誌だから当然の如く薬師丸ひろ子の扱いが大きいのはいいとして、またその可愛さがただ事ではない。巻末のスタッフ紹介では、秋山協一郎*3がひろこ狂いのあまり原稿料いらないから会わせろと無理やりインタビューし握手までしてもらったと暴露されている。この時薬師丸さんは15歳。実相寺昭雄監督による資生堂のCM「色」*4が大反響を呼び国民的アイドルへと成長していく途上である。翌年には主演映画『翔んだカップル』が公開され俺は初めてスクリーンの中で光り輝く彼女と出会うことになるのだがそれはまた別の話。

*1:白黒写真なので色は勝手に推測した。

*2:詳細は「新井素子works:『バラエティ』1979年10月号」を参照のこと。

*3:ひでおと素子の愛の交換日記』の担当をしていたあの「秋山さん」である。

*4:カンヌ国際広告映画祭のテレビ部門で金賞、グランプリを受賞した。