佐々木敏『ゲノムの方舟』。ネタバレあり。
読了。図書館で借りてきた本。アイデアの核心部分は新井素子さんの「週に一度のお食事を」のオチと同じである。著者は早くからそのネタを小出しにする。その後どのように肉付けされるのかが読み処かと思いながら読んだが、まず素朴な陰謀論と根拠のないド偏見に強い抵抗感を抱いた。そして間抜けな登場人物たちが繰り広げる行き当たりばったりとしか思えないエピソードが頻出するのが激しく萎える。著者は至極真面目に書いているんだろうがそれが却って滑稽感を醸し出していると思われ、モンティパイソンのメンバーで映画化すれば政治諷刺コメディとして面白くなるかも知れないとも思った*1。ただ後半には意外な展開があったりして楽しめた部分もある。途中で放り出したいのをかなり我慢しながら読んだので、どうでもいい描写を削ればこの分厚い本も三分の二にはなるのに、とは恨み言である。
はてなキーワードの「ゲノムの方舟」には新井素子さんがこの小説を評した言葉が記述されている。
○SF作家新井素子さんが「かなりの読み応え」。--『新刊展望』2001年1月?号(2000年11月?発売)「読書日記」
この雑誌は以前素研の掲示板で友人から教えてもらったものと同じだと思われる。
「新刊展望」2001年1月号(本の取次会社の日本出版販売が発行している新刊案内の小冊子。一応雑誌扱いで160円ですが、書店によってはただでくれるところもあったりする)に「読書日記〜日々、平穏」と題した新井素子さんの文章が2ページ載っていました。内容はタイトル通り11月12日〜16日までの読書日記です。
このエッセイの中にかなりの読み応え
という記述があるのだろう。確認は今後の課題である。
(関連記事:id:akapon:20040704#p1,id:akapon:20040704#p2)
- 『ゲノムの方舟』,佐々木敏,徳間書店,2520円,ISBN:4198612501
追記
その後、件の『新刊展望』は入手した。7月28日の日記(id:akapon:20050728#p1)を参照されたい。
*1:もう不可能だけどね。