読了。SFというジャンルを盛り上げようとする涙ぐましい努力が垣間見える好著。
そんなこととはまるで関係なく新井素子さんの名前が登場する箇所を拾っていこう。
- 『現代SF1500冊 乱闘編1975〜1995』,大森望,太田出版,2300円+税,ISBN:4872339274
第1部 海外SF問題相談室 1987〜1991
[5]SFの歴史はSF雑誌の歴史である
P.81より。
ぴかぴかの新人、マーク・レイドローの初邦訳『パパの原発』(友枝康子訳/ハヤカワ文庫SF)は、期待してたわりにぱっとしない。レイドローさんは一九六〇年生まれっていうから、僕よりひとつ上。新井素子、川西蘭、中村融と同い年で、久美沙織、大原まり子、牧眞司なんかのひとつしたってことになる。
このエッセイの初出は『小説奇想天外』5号(1988年8月刊)。
[6]練馬でSFについて考えてみた
P.84より。
(略)そして今日、九月十一日はと言えば、川又千秋氏から三年前に壱万円で譲り受けたホンダ・タクト・フルマークにうちmがたり、キャベツ畑を横目に見ながら豊島園の前を通り過ぎ、練馬区のどまんなか、春日町青少年館に赴いて(「春日町なんて、うちから自転車で行く以外、交通手段ありませんよー」と、日本SF大会で会った練馬区在住のSF作家・新井素子さんはきっぱり断言した)、練馬区教育委員会主催「第三回青年祭/THAT'S サイバーパンク」なるイベントに参加、(略)
このエッセイの初出は『小説奇想天外』6号(1988年10月刊)。
[付録1]SF'88――1988年度SF出版総括
P.110より。
以下、一九八八年の日本SFその他の注目作を順不同で列挙する。
小松左京『時也空地球道行』(読売新聞社→ケイブンシャ文庫)、豊田有恒『進化の鎮魂曲』(徳間書店)、荒巻義雄『聖シュテファン寺院の鐘の音は』(徳間書店)、川又千秋『総統兵団、潜行す』(中央公論社Cノベルズ)、『幻視界1』(トクマノベルス)、かんべむさし『妄想特急』(中央公論社)、神林長平『敵は海賊・猫たちの饗宴』(ハヤカワ文庫JA)、『過負荷都市』(トクマノベルス→ハヤカワ文庫JA)、火浦功「トリガーマン!(1)』(ソノラマ文庫)、岬兄悟『洪水パラダイス』(講談社)、新井素子『いまはもういないあたしへ…』(大陸書房→ハヤカワ文庫JA)、谷甲州『36,000キロの墜死』(講談社)、朝松健『天外魔艦』(中央公論社Cノベルズ→ハルキ文庫)、友成純一『戦闘娼妓伝』(双葉ノベルス)、田中芳樹『夏の魔術』(トクマノベルス→講談社文庫)、平井和正『地球樹の女神1・2』(カドカワノベルズ→徳間書店→アスペクト→e文庫)、梶尾真治『チョコレート・パフェ浄土』(ハヤカワ文庫JA)など。
このエッセイの初出は『文芸年鑑』平成二年度版。
「新刊めったくたガイド」SF時評
『本の雑誌』に掲載されたSF時評が収録されている。小見出し横の( )が初出。
『完全な真空』は奇想SFのオールタイムベストだ!('90年2月号)
P.181より。
かつてコバルト文庫やソノラマ文庫が新井素子、山尾悠子、大原まり子、岬兄悟、夢枕獏、菊地秀行などなどの作品をがんがん出していたように、いま各社が続々参入しつつあるティーン向け文庫市場もSF雑誌デビューの若手や新人SF作家の格好の受け皿になっている。
山田正紀はやっぱりすごいぞ!('90年3月号)
P.185より。
今月の意外な収穫は、山本弘の『時の果てのフェブラリー』(角川スニーカー文庫)★★★☆。著者は、第一回奇想天外SF新人賞に「スタンビード!」で(新井素子「あたしの中の…」などといっしょに)佳作入選した、《ネオ・ヌル》出身の古手ファン・ライター。
「あたしの中の…」は正しくは点が六個で「あたしの中の……」。
『文学部唯野教授』に抱腹絶倒!('90年4月号)
P.188より。
ファンタジー特集は以上。SFに移ると、新井素子『緑幻想』(講談社)★★★☆は、著者久々の書き下ろしSF長編。彼女の代表作でもある『グリーン・レクイエム』の直接の続編で、他者の犠牲の上で生きるしかない人間の存在を、植物の側から肯定する。テーマに対する追求は前作よりも一段と深化し、ほとんどディスカッション小説のノリだが、ノンを果てしなく積み重ねたあとのイエスだからこそ感動がある。
『知性化戦争』千八百枚を息もつかずに一気読み!('90年9月号)
P.204より。
岩本隆雄『星虫(→ソノラマ文庫)★★★は、学園ものの体裁をとりつつ、初期の新井素子を思わせるタッチで大きなテーマに挑んだ本格SF。
ベア、ベイリー、シェパード、重量級が揃い踏み('91年8月号)
P.238より。
新井素子『ふたりのかつみ』(角川書店)★★★は、同じ名前と生活環境を共有するパラレルワールドの男の子と女の子がひょんなことから知り合って、世界と性別の入れ替わりを経験する、著者十八番のドタバタコメディ。SF味はうすいものの、トランスジェンダーな日常のディテールが楽しい。
人名INDEX
巻末に「人名INDEX」が掲載されているのだが、新井素子さんの登場箇所としては、P.129(年表中)、P.151、P.185が抜けている。