J1リーグ第26節、対東京ヴェルディ1969戦。

こんな衝撃的な結末は2003年の2ndステージ最終節、対横浜F・マリノス戦以来だ。もちろん悪い意味においてである。4-4で引き分け。勝っていた筈の試合だった。
試合はヴェルディに先行される苦しい展開だった。しかし0-1で迎えた後半、カレンと船谷に代えて故障明けの西と成岡を投入すると試合は大きく動き出した。まず中山が頭で決め、同点に追いつく。その後ヴェルディに2得点を許し1-3と大きくリードされたが磐田の勢いは止まらない。名波のコーナーキックを成岡が頭で決めて2-3、西のダイレクトボレーが決まり3-3の同点、そして太田が得意の右45度「ヨシゾーン」からスーパーゴールを決め、4-3。とうとう逆転に成功した。決めるべき人が決め、交代した選手が活躍し、更に若手が続いた。これ以上はないという最高の展開だ。1-3になった時に一瞬、このまま負けてしまうのかと弱気な思いが頭をよぎった後だっただけに、劣勢を跳ね返した選手達に畏敬の念が沸々とわき起こる。最後まで勝利を信じなかった俺が悪かった。よし、このまま行ける!
そして後半のロスタイムも残り僅かとなった時、ヴェルディペナルティエリアで成岡が倒されPKをゲットした。蹴るのは中山である。決まれば5-3、決まらなくてもそのまま試合終了という時間帯である。磐田の勝利は揺るぎないものとテレビで見ていた俺も安心しきっていた。
それが。
中山が思いっきり右足で蹴った強烈なボールはゴールバーを叩き、高い金属音を残して磐田ゴールへ向かって大きく跳ね返った。これを見て取ったヴェルディ側はカウンターを仕掛ける。途中交代で3バックの右側に入っていた茶野はドリブルでボールを持ち込む玉乃に追いつくことがきない。茶野のタックルは玉乃を後ろから倒し、ジュビロペナルティエリア手前でFKを与えてしまう。3分あったロスタイムもとうに過ぎ、後半は既にトータルで50分を超えている。ここを抑えれば勝ちだ、頼む! との願いも空しく、ワシントンが蹴った地を這うボールは、無情にも川口能活の手の先をすり抜け、ゴールマウスに吸い込まれた。4-4。試合はそのまま引き分けで終了した。
しばしテレビの前で呆然としていた。200%勝利を確信していた俺には、とうてい受け入れがたい結末であった。衝撃があまりに大きすぎ、これを書きながら混乱に陥った頭の中を整理をしているような状態である。様々な「たら・れば」が頭の中に浮かんでは消える。
もし中山があんなに強くボールを蹴らなければ……
もし中山のボールが枠を外れていたら……
もし茶野が途中交代でフィールドに入っていたのでなければ……
もし茶野がもっと落ち着いて対応できていたら……
今さら言っても仕方がない話である。こんな結末があり得るのか。サッカーとはかくも残酷なものなのか。勝利の女神が気まぐれであることは充分に知っていた筈だった。その気まぐれにはこれまで何度も遭遇し、一喜一憂した記憶が今になって頭の中に蘇ってくる。悔恨の念とともにここに改めて記しておこう。サッカーは怖い。試合終了のホイッスルが鳴るまでは何が起こってもおかしくない、と。
空しい勝ち点1である。