篠田節子『ロズウェルなんか知らない』。

読了。図書館で借りた本。新井素子さんが連載エッセイ「読書の缶詰」の第10回で紹介した小説である(id:akapon:20050921#p1)。かつては観光で栄えたが現在では訪れる者もなく次第に過疎化が進む駒木野町。現状に焦りを覚える町の青年団員(年齢的には中年)たちは、UFO墜落という都市伝説で有名なアメリカの街ロズウェルよろしく、UFOや超常現象を観光資源として町全体をテーマパーク化することを思いつく。町おこし事業として推進しようと立ち上がった彼らは、時代の流れに対応できない頭の固い老人たちとの対立や様々な挫折を経験し……という話。こんなにうまく話が転がれば世の中苦労はないと半ば醒めた目で見つつ、しかし決して不快ではない読後感。「スキャンダルを商売に結びつけない奴は経営者失格だ」とはアントニオ猪木の言葉であるが、まさにこの言葉通りのしたたかさを発揮する登場人物たちが滑稽であり、微笑ましいと同時に頼もしくもある。現代社会の寓話として楽しく読んだ。胸の内側が少し温かくなるようないいお話である。