J1リーグ第30節、対ジェフユナイテッド市原・千葉戦。

昨日行われた試合である。

ジュビロ磐田フクアリ初登場は前半0-2の劣勢から後半に追いついての引き分け。先週末から2試合の延長戦をこなした千葉はかなりお疲れ気味で、試合を通して磐田が主導権を握っていたのは間違いない。それでも勝つことができないのは現状における両チームの力の差の現れであると感じている。試合を諦めずに最後まで戦った磐田の選手たちにはいつもながら敬服する。ただ、今季の対千葉戦は4戦して2敗2分。結局一度も勝てなかったのは事実である。村井慎二茶野隆行崔龍洙の三人を引き抜いておいてこの体たらくでは、千葉サポーターに何と言われても黙って恥じ入るしかないではないか。天皇杯では両チームがあと一つ勝ち上がれば今年最後の対戦が実現する。そこで一矢報いたいとの思いを更に強くした。
それとは別に、この試合は俺にとって特別の感慨をもたらすものともなった。世代交代の予感が確信へと変わったという点においてである。前半出場の中山雅史と後半出場の前田遼一。その二人のFWの内、チームに活力を与え存在感を示したのは前田の方であった。中山も決定的なチャンスに絡むなどパフォーマンスは悪いとは言えないのだが、結果を出すのがプロの仕事だとすればこの厳しい試合に途中出場して攻撃のリズムを作り得点を上げた前田こそ称賛に値する。クラブの創生期から在籍しその象徴的存在であったベテランを伸び盛りの若手が徐々にしかし確実に追い越そうとしている。期待と寂しさが入り交じる複雑な心境である。
磐田が両ステージ制覇を成し遂げたのは2002年。その翌年、2003年からチームが過渡期に差し掛かっているのは磐田を応援する者全てが感じていることだと思う。前述したようにFWでは前田やカレンなど活躍する若手が登場して、ある程度の目処は付いた。しかし名波の代わりに誰が試合を作るのか、という重大な課題はまだ解消されてはいない。それがすんなり決まる筈がないとも思うのだが、幸い若手には各世代の代表歴を持つ有望株が数人いる。その台頭を、イライラしながらも楽しみに待っている、そんな今日この頃。
前半のみで退いた鈴木秀人の腰の具合はどうなんだろう。心配である。

茶野と村井

今日の磐田の2得点はいずれも村井がアシストしたものであった。ユース時代から所属していた千葉を離れ磐田の左サイドに定着した今季、守備面での貢献は大きかったものの攻撃面で得点に絡む場面は少なかった。もちろんそれは村井だけの責任ではなく、村井を生かすことができないチーム全体の問題でもあるのだが、右サイドの太田とのバランスを考えて攻撃を控えていたこともあると村井自身も語っていた*1。このアシストがチームにもたらした手応えは大きいのではなかろうか。
その村井と茶野はボールに絡むたびに千葉サポーターから盛大なブーイングを受けた。試合終盤には村井と茶野が二人同時に足をつってピッチに倒れていた姿がテレビに写っていた。肉体の限界を超えた運動量を発揮していた結果である。長く所属したクラブが相手であるから、リーグ戦を敵としてそのホームで戦うことについて特別な思いもあったのではないか。「J's GOAL」の試合レポートにはこんな村井の言葉が書いてあった。

試合前、千葉の関係者への挨拶にまわっていた磐田のMF村井慎二と話す機会があった。「今シーズン、磐田は千葉にまだ一度も勝っていないので、みんな意気込んでいるのでは?」と尋ねると、村井からは次のような答えが返ってきた。「いや、まだ千葉をなめているところがありますね。でも、磐田の選手にはうまさがある?だけど、千葉には磐田とは違ううまさがあるから、しっかりやらないといけないのに…」

チームの雰囲気に村井は危機感を持っていたようだ。自信が過信に繋がっていたのは千葉じゃなくてどうやらうちの方だったらしい。他チームから来た選手には部外者の目でチームに活を入れてもらいたいし、チーム内にそれを真摯に聞く耳を持ってもらいたいというのが率直な感想である。
テレビには映っていなかったが、村井は試合が終了しピッチを去る直前に古巣のゴール裏に向かって一礼したという話である。通過儀礼は済んだ。茶野と村井には更なる飛躍をチームにもたらして欲しいとますます期待するのである。

*1:ソースは忘れた。すまん。