『NIPPONアイドル探偵団 '88アイドル1000人データ・ブック』。
部屋の中をデフラグしていて発見した本。『NIPPONアイドル探偵団』の記念すべき第一冊目で、T.P.ランキングがそれまで独自に発表していたアイドルランキングを、顔写真や個人データ付きで発行したアイドル研究本である。1000人(実際には1001人)のランキングが掲載され、生年月日や所属事務所、芸歴などの詳細なデータが記載されているのが凄い。1988年と言えばアイドル冬の時代にまさに差し掛かっていた頃だったが、当時の芸能アイドルを全て網羅したと言っても過言ではないこの本のインパクトは凄まじく、これ以降年一回の定期刊行となった。
この中に新井素子さんの名前が登場する。と言っても1001人のランキングに登場している訳ではない。この本、一冊目と言うこともあってか芸能界ばかりでなく各界のアイドル的存在をピックアップするという暗中模索も行われており、関連するコラムが何本か掲載されている。その中の「知識人・文化人のなかにもアイドルがいっぱい」(文:しろまどか)に新井素子さんの名前が登場するのである。P.174より。
SF界のアイドルというと、誰でも新井素子を思い浮かべるだろう。
デビューも16才と若かったし、女子中高生を中心にした若者たちの間での人気は、まさにアイドル的なものがある(かくいう筆者もモトキストの一人であります、オジサンだけど……)。
しかし、彼女の人気は、あくまで作品に根ざしたものであろう。
つって、容姿で選べば山尾悠子にトドメを指す、と続いている。大きなお世話だ。ついでにデビューは16歳じゃなくて17歳の時だ。しかしアイドルと言ってもこの年すでに新井素子さんは二十代も後半に差し掛かっており、「アイドル」として祭り上げるには若干薹が立ちすぎている感も否めない。そのアイドル的存在感を継承する人材を欠いたことが後にSF冬の時代を招来したことは想像に難くない。嘘です。
文中の「モトキスト」という呼称は初めて目にしたような気がする。新井素子ファンを指す一般的な固有名称というのは現時点でも存在せず、『ファンロード』誌上では「モトコスト」とか「モトコイスト」とか「モトコシタン」などとファンが自称していたように覚えている。しかしあれだな、「モトキスト」って、「マルキスト」とか「トロツキスト」を連想させてなんだか物騒だな*1。いっそのこと「トレッキー」にならって「モトッキー」とでも名乗ってみたらどうだろうか。ちなみに素研会員は大学時代、SF研の連中から「マルモト」という差別用語で呼ばれていた。
他にはどんな人たちの名前が挙がっていたかも書いておこう。
- 文壇……椎名桜子*2/松浦理英子/中沢けい/堀田あけみ/山田詠美/高樹のぶ子
- エンターテインメント(一般)……落合恵子*3
- エンターテインメント(SF)……新井素子/山尾悠子
- エンターテインメント(ミステリ)……小池真理子/服部まゆみ/山崎葉子
- エンターテインメント(ジュニア小説)……小室みつ子/久美沙織*4
- 詩歌俳諧……園田恵子
- 学者(外国人)……スーザン・ソンタグ/ジュリア・クリステヴァ
- 学者(日本人)……上野千鶴子*5/猪口邦子*6/田中優子*7
- 予備校講師……高橋いづみ*8
- 評論家……池田晶子/島森路子*9
- 劇作・演出家……如月小春/木野花
- シナリオライター……島田満
- 作詞家……麻生圭子
- 写真家……織作峰子/沼田早苗
最後に本書のメインである正統アイドルのベストテンも書いておく。
- 『NIPPONアイドル探偵団 '88アイドル1000人データ・ブック』,T.P.ランキング編,JICC出版局,1000円,ISBN:488063462X
*1:全く関係ない替え歌。♪赤の天才が時に野心を抱き/世界革命を夢見た時に/きみはどうする/きみはどうするか、きみは/オルグされて黙っているか/今だ出撃! 公安刑事(デカ)/国家権力! 公安刑事/ニューナンブぶっ放せ/来たぞ、トロツキストのゲバルト軍団/頼む、頼む、頼む、頼む、公安刑事〜♪
*2:新人アイドル歌手の売り方と同じノリだし顔が平凡、と批判的な評。
*3:アイドル的存在というより元々アイドルDJが作家になった訳で別格、と書いてある。
*4:ロス疑惑の登場人物、三浦良枝さんに似ている、と書いてある。
*6:当時上智大学助教授。政治学専攻。現在は第3次小泉改造内閣にて内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画担当)の任に就く。青いドレスの女。
*7:当時法政大学助教授。国文学専攻。2004年7月4日放送の『週刊ブックレビュー』622号(NHK-BS2)に、新井素子さんとともにゲスト出演している。