鏡明編『日本SFの大逆襲!』。
部屋の中をデフラグしていて発見した本。SF短編を収録したアンソロジーで、1994年に刊行された。巻末の森下一仁のエッセイ「日本SFの歩み」に編纂の意図が書いてある。P.345より。
本書は現時点における”日本SF”の全体像を捉えるために編纂された。執筆陣は、日本SF大賞と日本ファンタジーノベル大賞の歴代受賞者たちである。
続けてこのエッセイの意図も語っている。
”日本SF”とはどういうものか?
ここではおもに出版の分野に限って、その歴史をたどり、正確の変遷を見てみよう。
その本文中に新井素子さんの名前が二度登場している。まずはP.350、大作SF映画ブームが起こった1970年代後半から各種SF雑誌が創刊された、という状況についての言及。
これらの雑誌を舞台に、新たな書き手が活躍を始める。「奇想天外」からは、新井素子、夢枕獏、高井信、谷甲州、大和真也、中原涼、「SFマガジン」からは、岬兄悟、野阿梓、神林長平、大原まり子、火浦功、水見稜、草上仁、難波弘之、「SFアドベンチャー」からは田中芳樹、大場惑、松本富雄、波津尚子、西秋生らが、「SF宝石」からは菅浩江が出た。
もう一つP.351、ブーム時に別ジャンルの作家がSFを書きはじめたという状況説明の後に。
この時期見逃せないのは、集英社文庫コバルトシリーズ、朝日ソノラマのソノラマ文庫というティーンエイジャー向け文庫の存在である。わかりやすくて面白い小説を目指す両文庫には、新井素子、夢枕獏らをはじめとして多くの新人SF作家たちが執筆陣として参加、逆にこれらの文庫にSF作品を発表して作家としての地歩を固める者も出てきた。高千穂遙、斉藤英一朗、菊地秀行、清水義範らである。この傾向は、その後も講談社X文庫、角川スニーカー文庫などへと舞台を拡げて現在まで続き、朝松健、飯野文彦、伊東麻紀、井上雅彦、梅原克文、小野不由美、久美沙織、小林一夫、図子慧、波多野鷹、ひかわ玲子、山下定らの人材を輩出している。
- 『日本SFの大逆襲!』,鏡明編,徳間書店,1700円(本体1650円),ISBN:4198601976