巽孝之『ジャパノイド宣言 現代日本SFを読むために』。

部屋の中をデフラグしていて発見した本。著者が書いた日本人SF作家の著書の巻末解説をまとめた評論集で、1993年に刊行された。新井素子さんの名前が三箇所に登場してくる。

巻頭言「ジャパノイド宣言――現代日本SFを読むために」(P.4-5)

SF作家を世代別に分類し、第一世代から第四世代まで作家名を挙げている。P.4に新井素子さんの名前が第三世代として登場する。

1960年代・第一世代
星新一小松左京筒井康隆眉村卓光瀬龍平井和正豊田有恒石原藤夫広瀬正山野浩一石川英輔久野四郎野田昌宏半村良荒巻義雄
1970年代・第二世代
堀晃、梶尾真治川又千秋横田順彌鏡明田中光二山田正紀かんべむさし山尾悠子夢枕獏森下一仁鈴木いづみ亀和田武高千穂遙栗本薫
1970年末〜1980年代初頭・第三世代
新井素子野阿梓神林長平大原まり子岬兄悟火浦功水見稜谷甲州中原涼菅浩江難波弘之
1980年代後半・第四世代
中井紀夫、大場惑、柾悟郎松尾由美、東野司、草上仁、狩野あざみ

微妙なのは第二世代と第三世代の世代区分である。栗本薫の作家デビューは1978年の江戸川乱歩賞受賞作『ぼくらの時代』(非SF)で、1977年にデビューした新井素子さんより遅かった。何故に第二世代に入るのか。中島梓名義では1976年より評論家として活動していたので、そちらの実績を考慮したということか?
高千穂遙夢枕獏新井素子とデビュー年は同じ。しかし世代は別れているし、判定基準がいまいちよく判らない。実年齢も適用されているような印象も受ける。(そうすると1954年生まれの野阿梓が第三世代にいるのが謎なんだけど)

9 菅浩江を読むために――『雨の檻』と未来(P.94-97)

P.95に新井素子さんの名前が登場する。

山尾悠子華やかなりしころだったから、女性SF作家といえば幻想風味という先入観が根強かった当時だけれど、にもかかかわらず七〇年代後半より新井素子大原まり子がつぎつぎとデビューしていたし、とりわけ大原まり子の本格SF志向が菅浩江自身の大きな励みになったと思う。そしてじっさいに、前記エッセイの翌年、菅浩江は、宇宙開発途上で再評価される試験管ベビーとして生まれたヒロインと「遺志」のかたちで構造化された母親像とのあいだで起こる主体分裂を描く野心作「ブルー・フライト」を〈星群ノヴェルズ〉に発表、それが旧〈SF宝石〉誌八一年四月号に転載されて作家デビューを飾る。

現代日本SF略史(P.229-232)

P.231、1981年に新井素子さんの名前がある。

火浦功新井素子水見稜亀和田武、〈SFマガジン〉に初登場
〈奇想天外〉休刊
筒井康隆虚人たち』で泉鏡花文学賞受賞
夢枕獏『幻獣変化』
菅浩江「ブルー・フライト」で〈SF宝石〉に初登場

年表中では新井素子さんのデビュー(1977年/『奇想天外』1978年2月号にて)は無視されている。菅浩江のデビューはちゃんと書いてあるのに、本書で取り上げていない作家には冷たい。SFマガジン〉に初登場ったってデビューしてから約3年も経ってるもんなあ。