巽孝之『ジャパノイド宣言 現代日本SFを読むために』。
- 『ジャパノイド宣言 現代日本SFを読むために』,巽孝之,早川書房,1800円(本体1748円),ISBN:4152078227
部屋の中をデフラグしていて発見した本。著者が書いた日本人SF作家の著書の巻末解説をまとめた評論集で、1993年に刊行された。新井素子さんの名前が三箇所に登場してくる。
巻頭言「ジャパノイド宣言――現代日本SFを読むために」(P.4-5)
SF作家を世代別に分類し、第一世代から第四世代まで作家名を挙げている。P.4に新井素子さんの名前が第三世代として登場する。
- 1960年代・第一世代
- 星新一、小松左京、筒井康隆、眉村卓、光瀬龍、平井和正、豊田有恒、石原藤夫、広瀬正、山野浩一、石川英輔、久野四郎、野田昌宏、半村良、荒巻義雄
- 1970年代・第二世代
- 堀晃、梶尾真治、川又千秋、横田順彌、鏡明、田中光二、山田正紀、かんべむさし、山尾悠子、夢枕獏、森下一仁、鈴木いづみ、亀和田武、高千穂遙、栗本薫
- 1970年末〜1980年代初頭・第三世代
- 新井素子、野阿梓、神林長平、大原まり子、岬兄悟、火浦功、水見稜、谷甲州、中原涼、菅浩江、難波弘之
- 1980年代後半・第四世代
- 中井紀夫、大場惑、柾悟郎、松尾由美、東野司、草上仁、狩野あざみ
微妙なのは第二世代と第三世代の世代区分である。栗本薫の作家デビューは1978年の江戸川乱歩賞受賞作『ぼくらの時代』(非SF)で、1977年にデビューした新井素子さんより遅かった。何故に第二世代に入るのか。中島梓名義では1976年より評論家として活動していたので、そちらの実績を考慮したということか?
高千穂遙も夢枕獏も新井素子とデビュー年は同じ。しかし世代は別れているし、判定基準がいまいちよく判らない。実年齢も適用されているような印象も受ける。(そうすると1954年生まれの野阿梓が第三世代にいるのが謎なんだけど)
9 菅浩江を読むために――『雨の檻』と未来(P.94-97)
P.95に新井素子さんの名前が登場する。
山尾悠子華やかなりしころだったから、女性SF作家といえば幻想風味という先入観が根強かった当時だけれど、にもかかかわらず七〇年代後半より新井素子や大原まり子がつぎつぎとデビューしていたし、とりわけ大原まり子の本格SF志向が菅浩江自身の大きな励みになったと思う。そしてじっさいに、前記エッセイの翌年、菅浩江は、宇宙開発途上で再評価される試験管ベビーとして生まれたヒロインと「遺志」のかたちで構造化された母親像とのあいだで起こる主体分裂を描く野心作「ブルー・フライト」を〈星群ノヴェルズ〉に発表、それが旧〈SF宝石〉誌八一年四月号に転載されて作家デビューを飾る。