久美沙織『これがトドメの新人賞の獲り方おしえます』。
読了。図書館で借りた。第一作と第二作は文庫版で読んだのだが、第三作目のこの本は文庫化されていない。たまたま図書館にあったので、ついでにと思い読んでみた。元は『小説あすか』(角川書店)の連載企画で、作家志望の投稿者たちをRPGの登場人物に見立て、課題を与えながら勇者として成長させる、という段取りで進行した。合間合間に作家として必要なスキルの解説が入る。
個人的に思ったこと。余計なストーリーがうざったくて小説の入門書として読みにくい。参加者たちのキャラクター付けやHP・MPの増減が話の小道具として機能していないからRPG的物語としてつまらないし、後から後から増えてくるキャラ(投稿者)が話の混乱に拍車をかけるのもうんざりした。まあそもそも作家志望でもない俺がこういった本を読むのが間違っている訳だから、文句を言う筋合いではない。参加した人と連載を追いかけて読んだ人は臨場感があって面白かったんじゃないかなと想像する。また、作家志望者なら自分と登場人物を重ね合わせて、もっと共感しながら楽しく読むことが出来るのかも知れない。
新井素子さんの名前が出て来ることは期待していなかったが、たまさか一箇所に登場してきたのでメモ。第六回「第六の冒険」のP.242である。最終決戦の課題は”『痛い・または・怖いシーン』を三百字以内で一人一作品”。そして始まったある参加者同士の一騎打ちについて、祭司長クミ様がコメントしている。
スプラッタ映画なら、ドバドバ血が出て肉塊が飛び散って、悲鳴だのチェーンソーの回る音だのがしてれば、充分ショッキングだし、おぞましい。
が、小説で、コトバで痛さ怖さを出そうと思ったら、単なる事実の実況ではいかんのだ。課題は文字数が少なくて難しかったのはわかるが、読者がアッと驚くような、ひとひねり、ひと工夫が必要だった。
この手に挑戦してみようと思うひとは、新井素子『もとちゃんの痛い話』角川文庫(笑える。でも身をよじらずにいられぬくらい痛い!)を読んで、勉強してくれたまい。
確かにあのエッセイに書いてあった治療の様子は痛そうだった。そして笑える。さすがにプロは違うんだな。
- 『これがトドメの新人賞の獲り方おしえます』,久美沙織,徳間書店,1400円+税,ISBN:4198608237