『あたしの中の……』新装版、本日発売。

集英社コバルト文庫から新装版として発売された。イラストは最近おなじみの四位広猫氏で、表紙の青色が印象的。なかなか綺麗だと思う。
あとがきに、奇想天外社版の『あたしの中の……』が発売されたのが「1977年」とあるが、「1978年」の間違いですよ>新井素子さん。奥付を見ると1978年12月15日発行となっている。
集英社文庫コバルトシリーズから「チューリップさん物語」を新たに収録して発売されたのは、それより3年後の1981年だった。俺は確か『いつか猫になる日まで』『星へ行く船』に続く三冊目の新井素子本として読んだと記憶している。二作を読んですっかりはまっていたので、新刊で出た時に速攻で買った。当時は作品が書かれた順番など全く気にしていなかったので、二作より前に書かれたものということも意識せず、新しい本が出たのがただ嬉しくて喜んで読んだものだった。
久しぶりに読み返してみると何だか新鮮である。現在よりもこの頃の方が文章が硬い感じがするし(口語体と言っても江戸弁みたいな感じ)、ストーリーの粗も目に付くんだけど、悪い意味じゃなくこぢんまりとまとまっていて話がよく出来ていると思う。けっこう楽しく再読できた。
あとがきには、新人賞でデビューした自分が現在は新人賞の選考委員を務めていることについての感慨なども書いてあり興味深い。星新一の解説も再録されており、新井素子さんにとっても読者にとっても、初心を確認することが出来る本なんではなかろうか、これは。

これで『星へ行く船』シリーズ以外のコバルト文庫作品は新装版が出揃った訳だが、次はいよいよ……となるかどうかが気になる処。