佐々木敏『中途採用捜査官 @ネット上の密室』。
読了。図書館で借りた本。新井素子さんが『週刊ブックレビュー 622号』(2004年7月4日放送)で紹介していたので読んでみた。
読むのが遅れたのはタイミングの問題としか言いようがない。図書館で借りようとするといつも貸し出し中だったのである。2004年4月刊の本だから出版されてから1年以上が経っているのに、である。その間には続編の『中途採用捜査官 SAT、警視庁に突入せよ!』も出版され、どうやら人気があるようだとは感じていた。しかし、デビュー作の『ゲノムの方舟』にはかなり辟易させられたので(id:akapon:20050629#p1)、新井素子さんの推薦本とは言えどんなもんだろうと恐る恐る読んでみたら、これが面白いのである。
大真面目な国際謀略小説であった『ゲノムの方舟』とは内容も雰囲気もがらりと変わり、SE(システム・エンジニア)から中途採用で刑事となった主人公が巻き込まれた事件と、彼の所属する警視庁捜査二課のはみだしチームの活躍がコミカルに描かれている。「特別捜査官」*1という聞き慣れない役職がまず新鮮だったし、物語の成り行きもそれをうまく活かして次から次へと興味を繋ぐ。事件の関連で登場する警察内部の描写や本の流通の仕組みなど、細部を語る際も説明が具体的でしかも話の進行の邪魔をする程くどくないので「へ〜、そうなんだ」と感心しながら読めてしまう。物語の核心部分で引っかかる処は三箇所程あったが、テンポが軽快なのでまあいいやという気にさせられた。期待はいい意味で裏切られた。読んでよかったと率直に思った。
本文中にも名前が出てくるのだが、コミカルな刑事物ってことで『踊る大捜査線』とイメージがちょっとダブったかな。そう言えば青島刑事もコンピュータ会社の営業から転職したという設定だった。特別捜査官ではなかったが。という訳で読書中は主役級をこのようにキャスティングしていた。
一部『沙粧妙子』と『古畑任三郎』が混じってます。一旦このイメージが定着すると最後まで頭から離れなかった。俺にしては珍しいことである。
続編を読んでみたいが図書館はもう閉館の処が多いかな。借りられるか調べてみることにする。
- 『中途採用捜査官 @ネット上の密室』,佐々木敏,徳間書店,2000円+税,ISBN:419861847X
*1:警視庁には、専門的な知識や技術を持った社会人を幹部として中途採用する「特別捜査官採用制度」というのが実際にあるらしい。【警視庁】http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/saiyou/keisatsu/tokubetu/tokubetu.htm