佐藤江梨子『気遣い喫茶』。
読了。図書館で借りた。彼女が文章を書く人であるというのは『小説すばる2003年11月号』で知った。
106人の作家に聞きました。発作的特別代アンケート!
明日から、無人島に流されることになりました。
持っていく私物は3つだけ あなたはなにを持っていきますか?
このアンケートの佐藤江梨子の回答が案外に面白かった。グラビアアイドルとして活躍中の彼女がなぜ「作家」として登場するのか疑問に思い、ネットで調べてみるとエッセイ集が出ているというのを知った。それがこの本『気遣い喫茶』である。初めてタイトルを見た時に『気違い喫茶』と読み間違えたのは内緒である。以来忘れていたのだが、たまたま図書館で見つけたので借りてみた。
エッセイ集だと思って読んだら、第3章を除いて文章が散文でない。短いものは2行、長いものは数ページに及ぶが、ほとんどが句点や読点や語句の適当な処で改行された短いセンテンスの繋がりで成り立っている。作品によっては明らかに韻を踏むことを意識している。詩に見える。
そしてまた単語の使い方が鋭く、生々しく、時に痛々しく、そして明るく、活き活きしている。自分の持てる武器を目一杯使って自分と世界の相対関係を冷静に、健気に、情熱的に語っている。単なる作文からは感じ得ない詩情を感じる。若い子ならブログやメールで当たり前のようにこういう文体で書いたりもするのだろうが、俺ならこの本を紹介する時には「詩集」という言葉を使うだろう。ページからは今ここで生きていること、生きていこうとすることに対する断固とした意志が感じられる。
俺にとってけっこうな刺激をもたらしてくれた本である。いい本を読んだと感じた。
- 『気遣い喫茶』,佐藤江梨子,扶桑社,1238円+税,ISBN:4594041949
佐藤江梨子は昨年12月31日までの期間限定で「jocoso」というネットサービスでブログを開設していたらしい。今日の昼間はそのページがまだ見れたのだが、今見ようとしたら既に閉鎖された後だった。読んでみたかったな。惜しいことをした。