『週刊現代』1979年1月18日号。
オークションで落札した雑誌。書籍紹介コーナー「現代らいぶらりい」の一角に、本の紹介とその著者からのメッセージを記載した「メッセージ」という欄がある。そこに初の著書『あたしの中の……』を刊行したばかりの新井素子さんが登場している。顔写真(眼鏡無し)もあり、御年18歳のふくよかな顔が微笑んでおられる。
下記がその内容である。「★」以下が新井素子さんの書いた文章となっている。
●前口上 「なんと――なんと、私の本ができるなんて」というのが、表題作により奇想天外SF新人賞をとった著者のあとがき(原文傍点)の感想だ。
なんと、なんと新鮮で魅力に富んだ言葉じゃありませんか、ほんとに。
★小さな頃から、お話作りが好きでして、気がついたら文章を書くようになっていました。また、SFが好きだったためか、自然とSFを書くようになっていました。
書く以上やはり、おもしろくて読み易いものを書けたらというのが理想なのですが、すくなくともこの本に関する限りは、書く段階で、作者の方が目一杯楽しんでしまい、果たして読む方の分までおもしろさが残っていますかどうか……。
また、私、わりと小さなことをくよくよ気にするタイプなのです。ですから、ぜひ”明るくかわいい女の子が逆境にもめげずたくましく生きてゆく話”を書いてみたかったのです。それが、ちょっとしたさじ加減違いで、”明るくかわいい”というよりは”後生楽で脳天気な”女の子が、”逆境にもめげず”というより”逆境を楽しんでいる”ような雰囲気の話ができあがってしまいました。
私としては、同世代の女の子が、これを読んでおもしろがってくれれば、何といってもうれしいのです。また、男の子や年輩の方が、違った目でみておもしろがって下されば、もっとうれしいのですが……。
女の子に向けて書いているというのはよく聞かれた発言である。しかしデビューがSF雑誌だったこともあり、この時点ではまだ新井素子さんの小説を読む若い女性は少なかった筈である。ブレイクしたのは集英社コバルト文庫に登場した後のことであった。
情報は素研に掲載済み。→「お仕事リスト:『週刊現代』1979年1月18日号