筒井康隆『恐怖』。

読了。いつ買ったのか覚えていないのだが、ハードカバーが本棚にあったので読んでみた。ちなみに平成13年(2001年)1月10日発行の初版である。買った理由はたぶんタイトルに惹かれたからだろう。恐怖という感情には以前から興味がある。俺が物心ついて以来人一倍気が弱いせいかもしれない。
それはさておき、筒井康隆の小説を読んだのは十数年ぶりではないかと思う。文体が変わっておらず相変わらず筒井康隆だったのが懐かしさをそそる。この小説では主人公を襲う恐怖心の発生からその後の顛末、恐怖心が去るまでが描かれている。人の悲劇は喜劇に見えると言うが、恐れの感情に踊らされ身も心もボロボロになっていく主人公はひたすら滑稽である。恐怖心から出でくるこらえようのない不安感は身に覚えのあるもので、冷笑しつつ冷や汗をかくという背反する感情が心中に起こった。分裂している。