半村良『岬一郎の抵抗』。

読了。図書館で借りた本。1988年の日本SF大賞受賞作。大変な読み応え。超能力者の出現=人類の進化という図式はいささか古めかしく思われたが、東京は下町の人々の暮らしぶりとその大仰なテーマがちゃんと両立して語られている処が面白い。進化に対する考察はさておき、世界を変える程の力を獲得した一人の超人を巡る世界規模のドタバタ劇がシリアスかつ丹念に描かれている。最後の一文の何とも皮肉な響きにやられた。神の如き存在を許容できない人類という種の業の深さを語り尽くした感がある。