ガガガ文庫編集部編『ライトノベルを書く!』。

書店にて購入した本。「クリエイターが語る創作術」というサブタイトルが付いている。新井素子さんの名前が出て来る箇所があったので買ってみた。登場箇所を挙げてみる。
作家である野村美月のインタビュー中に何箇所か名前が登場する。P.127より。

――大学卒業前と後で作風は変わりましたか?
野村 いえ、一貫してずっと少女小説的なものです。読書体験としては、氷室冴子さんや新井素子さんの著作からの影響が絶大なんですね。私の世代だと、「ライトノベル」のレーベルは今よりずっと少なくて、ジャンルとしてもまだ確立されていなかった。ですから、やはりティーンに向けた小説を書くときには「少女小説」という意識が念頭にくるんですよ。その意味では、今でもあまり肩肘張って「ライトノベルを書こう!」と意識して書いたことはないです。

P.128より。

――野村さんの作品に頻出する、清楚で心が強くて多弁なキャラの原型はそこですか?
野村 でも、別に意識的に登場させているわけではないんですよ。ただ、私が読んでいた頃の氷室さんや新井さんの作品も台詞で読ませるところがあったし、演劇が好きでよく見ていたことも影響していると思います。

P.131より。

――もともと文体を意識して小説を読まれていました?
野村 どの文体が好きな文体か、というのはずっとありましたから、意識していたと思います。いまでも自分の小説を書いているときに、引きずられそうな作品は読まないようにしていますし、マネになってもいいことはないですからね。新井素子さんとか、特徴が際立っていて、本当に危ないんですよ。あの「あたし〜〜だった」という書き方は、新井さんがやるから良いものなのに、読むと影響されてしまうので(笑)。

次は佐藤大×イシイジロウ×東浩紀の鼎談の冒頭部分。P.189より。

佐藤 お二方のライトノベル原体験ってどこにありますか? 僕は『クラッシャージョウ』や『機動戦士ガンダム』から夢枕獏(注1)さんや平井和正(注2)さんみたいな伝奇ものをたどっていきましたが。
イシイ 僕はそのちょっと前。《宇宙戦艦ヤマト》(注3)シリーズの『さらば宇宙戦艦ヤマト』のノベライズから『機動戦士ガンダム』を通って、SFに行きましたね。ライトノベルで言うと『吸血鬼ハンターD』(注4)の菊池秀行(引用者注:原文ママ)とか平井和正……あのあたりですね。そのあとに新井素子を通っていった。
東 僕も新井素子(注5)のファンです。初めて読んだのは平井和正かもしれないですね。
佐藤 やっぱり僕らの世代ってそんな感じですよね。
東 そうですね。新井素子は、僕は当時、偶然本屋の棚で発見しました。新井素子の世間的価値がどういうものかは知らなかったけど、気に入ってました。もし後から「あんなのダメだ」って言われたとしても、たぶん負けずに大切に読んだと思う。でも、いまってそういう経験がなかなかできないでしょう。いまは、プチ書評みたいなものがネットに出回るのが早いので、評価が固まるのも早い。「とりあえず読んだ。ふーん、面白いな。でも検索してみたらみんな悪口言ってる。やべー。オレ地雷ふんじゃったよ。もう読まない、終了!」みたいな感じですよね(笑)。

P.190に註釈がある。

(注5)新井素子
一九六〇年生まれ。七七年、高校二年生のとき、第一回奇想天外SF新人賞で、多くの審査員が反対するなか星新一の推薦を受け佳作入選した『あたしの中の……』でデビュー。『ルパン三世』のような話が書きたかったと本人が語るように、マンガに肉薄するようなキャラクター造形、一〇代の読者が等身大の感覚で読める一人称「あたし」を用いた文体、SFファンをも唸らす巧みな構成で若い世代から支持を集めた。

ルパン三世』云々の発言のみが一人歩きしている様を見ることができる。「ルパン発言について」の詳細はWikipediaの「新井素子」の項を参照(→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E4%BA%95%E7%B4%A0%E5%AD%90)。
また、3人の選考委員の内2人が反対したことを多くの審査員がと言ってしまうのはどうかと思う。