『S-Fマガジン』2008年2月号。

本日購入。発売日に買わなかったのには特に理由はなく、単に買い忘れていただけである。関連する書物が出版された関係で新井素子さんの名前が出て来る箇所がいくつかある。抜き書きしてみる。
まずは『日本SF全集・総解説』刊行記念座談会「新たな日本SF史を構築する試み〜架空の『日本SF全集』編纂をめぐって〜」。著者である日下三蔵鏡明牧眞司による鼎談である。P.93より。

鏡 ああ、そういうことなんだ。なるほど面白いね。SFの歴史と自分の歴史が交差していくんだ。
牧 技法や作者のテーマにまで踏み込んで書いているのを感じたのって、新井素子の巻ですね。
日下 ご名答です。(笑)
牧 山田風太郎連城三紀彦をひきあいに出して、かなり鋭い、他の人が今までに指摘してなかったようなことを言っている。日下三蔵新井素子体験がここで窺える。僕はそういう独特の切り口が好きなんで、全体的にもっとあってもよかったなあ、と思いましたね。

他の処を読んでいないので判らなかったのだが、日下氏は新井素子作品に何らかの思い入れがあるようだ。
同じくP.97。

鏡 『魔獣狩り』が本当は大事だとは思うけど、やっぱり『上弦の月〜』も夢枕獏という作家を考えれば、抜くわけにもいかないしねえ。第三期のセレクションは、意外とおもしろかった。「へえ、なるほどね」と思うものとかあって。特に野阿梓菊地秀行を入れてるのは慧眼だなと思った。俺自身がセレクトすれば、必ず入れると思うんだけど、日下さん的にも当然なの?
日下 これは当然だと思ってます。やっぱり夢枕獏さんと対比させる意味で、菊地さんをその巻に置いたんです。第三期はグラデーションになるようにしておりまして、新井・夢枕・神林という流れが野阿・菊地・大原と対応して終わるようになってる。途中は栗本薫田中芳樹とか《幻影城》でつながったりしていますね。

同じくP.98。

鏡 九〇年代の半ばからSFの勢いが戻ってきたじゃない。
日下 九〇年代の半ばから戻ってきたのは、いったんホラーを経由してるんですよ。
鏡 なるほどね。俺、そうなってきたきっかけの一つは瀬名秀明の登場という気がしているのだけれど、たしかに最初はホラーで売り出されていたよね。あと、ライトノベルみたいなものはどう。
日下 ライトノベルが入ってくるのは、第五期の半ば、九八年ぐらいからですね。第三期の人たちだと夢枕獏新井素子菊地秀行ソノラマ文庫でもコバルト文庫でも〈SFマガジン〉でも書く、というように今で言うライトノベルとの境を自由に往復していたんですけれど、九〇年代になっていったんそれがなくなるんです。スニーカー文庫などでライトノベル分野が細分化されたので、そこ出身の人はライトノベル専門作家になってしまった。それが九八年あたりからライトノベルも書くけどSF専門誌にも来る、っていう人が出てきて、また混ざるようになってきました。いまSFの第一線にいる冲方丁小川一水野尻抱介といった人たちはみんなライトノベル出身といえますね。

「SF BOOK SCOPE」では長山靖生がこの本を取り上げており(P.129)、その中にも新井素子さんの名前が登場する他、P.163には広告があり(名前あり)、また「大森望のSF観光局」でもこの本について触れている(P.164)。

同じ十一月、早川書房からは、本紙連載をまとめた日下三蔵の『日本SF全集・総解説』が登場。本紙読者にはいまさら説明するまでもなく、星新一小松左京から、新井素子大原まり子まで、全四十三巻(+別巻一巻)に四十三人の作家を収める架空の全集の内容紹介――という体裁のガイドブックである。

次に《異形コレクション》10周年記念「井上雅彦インタビュウ」。P.100より。

編集部 あとがきからすると、そもそもこれを出すために《異形》を続けてきたかのように読めてしまいます。
井上 半分は正解ですかね(笑)。あとがきでも書いたんですが……《異形》の第一巻『ラヴ・フリーク』を書店で初めて手に取ってから、その十日ほど後に星さんが亡くなって。その少し前、《異形》第一巻と同時進行で、やはりコンテスト出身の太田忠司さんを中心にショートショート・アンソロジー『悪夢が嗤う瞬間』》を作っていた時、新井素子さんのご紹介で執筆者一同、星さんの奥様にご挨拶に伺ったことがありました。その年の暮れだったので本当にショックでした。《異形》の滑り出しの頃ですね。強い意気込みの一方で、SFマガジンに追悼文を書かなければならないという複雑な心境でした。それから一年後に、僕は《異形》で星さんと同時に日本SF大賞の特別賞を頂いた。これはもう、ショートショートという小説形式を守れというメッセージだろうと。今回のタイトルも、僕が初めて読んだ星さんのショートショート集『ひとにぎりの未来』から採りました。そもそもショートショートこそ、「異形」の文学様式の最たるものだという意味も込めまして。

同じくP.101より。

編集部 あえて十枚以内にすることでバラエティを出そう、ということですね。
井上 その結果、新井素子さんの十枚の最新SFもあれば、たった四行でニヤリとさせる横田順彌ヨコジュン)作品もある。川又千秋さんは「三百字小説」十二本立てが一本のショートショートになるものを、倉阪鬼一郎さんの八百字の怪談もあればいつもは百枚以上平然と書いてくる朝松健さんの四千字の室町ホラーもある。皆川博子さんのタイポグラフィもあれば、幻の作家になっていた西秋生さんの大傑作、燻し銀のような眉村卓さんの最新作も……という具合で、各作家それぞれのショートショート観が表れて、愉しい仕事でしたね。

P.120では「ホシヅルパーティー2007」のレポートがあり、当日の模様を伝える文章や新井素子さんの写真などが掲載されている。
最後に「SF BOOK SCOPE」の風野春樹の書評で『ほしのはじまり』が取り上げられている。P.122より。

『ほしのはじまり』(二六二五円/角川書店)は星チルドレンを自任する新井素子が編んだ星新一ショートショート選集。厳選された五十四篇のほか『星新一の作品集』の月報に掲載された単行本未収録エッセイ「星くずのかご」と、新井素子の思い入れたっぷりの「なかがき」、ワールドコンでの最相葉月との対談が収録されているのもうれしい。