静岡沖地震。

地震にたたき起こされた。揺れの大きさと長さがいつもの地震とは桁違いで、とうとう来たかとベッドの上で覚悟する。ガラスの割れる音が聞こえてきて尋常じゃない気配を感じる。揺れが収まったがまだ生きてる。すぐテレビを点けると、ここは震度5強と表示されている。両親も起きていて、携帯がつながらないと騒いでいる。母が父を起こしたら、父は外へ逃げるのになぜか押し入れの戸を開けようとした、と笑っていた。同報無線がひっきりなしに情報を伝えているが、周りの家も被害はなく、地震の直後なのに犬の散歩をしてるおじさんがいたりとか、この辺りでは緊迫した雰囲気は感じられなかった。
我が家の被害は大したことがなくて、仏壇の位牌が倒れたり、食器棚からコップが落ちて割れたり、自室にうず高く積んであった本の山が軒並み崩れたり、といった程度だった。ただ、うかつにもそのコップを暗闇の中で踏んでしまい、右足が切れた。出血したが、幸い皮が一枚めくれたぐらいで痛みもない。地震のニュースを見る度に、自分が遭遇したら慎重に行動せねば、と心に刻んでいたつもりだったが駄目である。割れたコップなんて思いも寄らない処にまで破片が飛んできていたりするんだな。スリッパは部屋に常備しておくべきだった、と反省。
家の被害も、テレビで報道された県内のコンビニ店内の様子もひどいものではなかったので、まあ職場も本が棚から落ちていたとしたってそんなに大したことはないだろうと高を括って、それでも念のため30分早く出勤した。
売場を見て愕然とした。
どうやら地震の揺れは南北の方向に働いたらしく、その向きの棚の本は全体の8割方が床や平台や飛び出したストッカーの上に崩れ落ち、埋め立て地のゴミのように積み重なって、足の踏み場もない有り様だった。ストッカーの中に溢れかえったコミックスの山は、上から落ちてきたというよりも地から湧き出して来たかのような不気味な迫力を醸し出している。しばし唖然として声も出ない。店長が既に来ていたが、かなりショックを受けた様子。隣店に常駐するマネージャーも来ていたが、そちらの店は大きな被害はなかったとのことで、この惨状を見てびっくりしていた。
今日はもう営業は無理だろうということで、マネージャーと店長とパート(俺含む)と応援部隊(休出の社員、取次会社の営業、急遽かり出されたアルバイト)で復旧作業に取り組んだ。売場担当は自分の持ち場を片づけるように指示される。コミック売場なんて、広いし本の数も多いし、どこから手を付けていいのか判らないくらいで、もう笑うしかない。端の方から、ぶちまけ状態のコミックスをどかしながらシリーズごとに選別して積み、だいたい1スパン分がまとまったら棚に戻す、という地道な作業に没入する。本もおとなしく下に落ちていればいいんだけど、まるで離れた処で発見されたり、向かい合う棚の本がごちゃ混ぜになっていたりとなかなか一筋縄ではいかない。3人がアシストしてくれたのがかなりありがたかった。
作業は予想以上に早く進み、なんとか午後4時前には開店することができた。作業中には多くの方が来店しては、ドアの張り紙を見て帰っていった。既に盆休みに入った企業もあるようで、昨日からは子供だけでなく大人のお客さんも昼間からたくさん来店しており、稼ぎ時なのにもったいないし、お客さんにも迷惑を掛けてしまって申し訳ない気持ちになる。
まだ作業は終わらない。開店後に新刊コミックの品出しで残業タイムに突入。今日が入荷の少ない火曜日だったのが不幸中の幸いだった。『鋼の錬金術師』最新23巻の発売日で荷物は大量にあったけれども、新刊棚に余裕があったので商品を入れ替える手間がかからない。補充商品も微々たるもので、速攻で品出し終わり。新刊を店頭に並べ、入りきらない分はストッカーに入れる。売上スリップの確認と発注は明日に回して17時に今日の勤務は終了。今までに経験したことのない作業を一日中していたので、非常に疲れた。
震度5強でこれってことは、本番が来たらどうなっちゃうんだろう。かなり不安。