『S-Fマガジン』2009年10月号。

25日に発売された雑誌。神林長平谷甲州野阿梓のデビュー30周年記念特集が組まれている。高橋良平がデビュー当時のSF界の状況振り返る「1Q7Q」というタイトルのエッセイを寄稿しているのだが、その中に新井素子さんの名前が登場している。P.89より。

七九年三月、徳間書店が〈問題小説〉からスピンオフさせた隔月刊の〈SFアドベンチャー〉を創刊、五月には光文社が〈アイザック・アシモフSF〉誌特約の隔月刊誌〈SF宝石〉を創刊し、本誌と〈奇想天外〉に加わって、専門誌が四誌となる。
そうした盛況の中、当然のことながら、新しい書き手が待望され、第一回奇想天外SF新人賞では、佳作の「あたしの中の…」で高校生作家・新井素子がデビュー。追って本誌では、五年ぶりにSFコンテストを開催し、野阿、神林の両氏がデビューしたのである。
この時期から登場した作家は、第三世代と呼ばれるようになり、その才能は、早川書房が八三年に刊行した《新鋭書下ろしSFノヴェルズ》に結集する。ラインナップは、神林『あなたの魂に安らぎあれ』、水見稜夢魔のふる夜』、岬兄悟『風にブギ』、大原まり子『機械神アスラ』、谷『エリヌス−戒厳令−』、新井素子『絶句…』で、夢枕獏の『上弦の月を喰べる獅子』も予定されていたが間に合わず、野阿梓の他、前年に本誌で「SF NEW GENERATION」の題でぼくがインタビュウした森下一仁田中文雄亀和田武、殿谷みな子、火浦功の各氏が、この書下ろし長篇叢書に加わらなかった理由は、残念ながら、知らない。

新人SF作家の台頭に触れる場合、新井素子さんの名前は必ず出る、という例。ちなみにデビューは1977年なので、三氏より2年早い。
細かい突っ込みを入れておくと、小説のタイトルは「あたしの中の…」ではなく「あたしの中の……」、「絶句…」ではなく「・・・・・絶句」。それから、森下一仁が《新鋭書下ろしSFノヴェルズ》に加わらなかったというのは高橋氏の記憶違いで、実際は「闇にひしめく天使たち」という作品の刊行が予告されていたが、現在に至っても完成したという話は聞かない。