2月4日回顧。

大森望のSF漫談」VOL・5を見るために上京した時の記録。

15:00

仕事はなんとか完了させて早退。急ぎ車で掛川駅に向かう。ホームに上がり駅の売店でガムを買っていたら新幹線が入ってきた。けっこうギリギリ。

15:31

新幹線こだまに乗車。『もいちどあなたにあいたいな』にタイトルが出て来たブラッドベリの『スは宇宙(スペース)のス』を読もうと持参していたんだが、緊張と興奮のため本に集中できずほとんど頭に入らない。

17:09

品川駅着。人が多い。ちょっと前まではこの人の多さに「帰ってきた」感が強まったものだが、今は気分的に完全アウェイ状態。田舎暮らしが身に染みついてしまったなあと慨嘆する。
山手線に乗り換え恵比寿駅へ。そこで日比谷線に乗り換え六本木駅へ。帰宅ラッシュの満員電車かと思いきや山手線はそこそこの混み具合、日比谷線はガラガラで杞憂だった。

17:30頃

六本木着。出口で逆方向へ行ってしまい六本木ヒルズの前に出る。お〜ここが例の、と思ったがすぐに道を遡行しABC六本木店へ向かう。
途中麻布警察署の前を通過。お〜ここが例の、再び。歩道上のガムテで仕切られた一角に短い脚立が何個か並べてあったがあれは報道陣用なんだろうか。いやそんな馬鹿な。

17:40頃

ABC六本木店着。とりあえず店内をぐるっと回ってみたが意外と狭くイベント用のスペースが見当たらない。

17:53

レジで予約していた『もいちどあなたにあいたいな』を購入し(2冊目)、サイン会の整理券をもらう。イベントについて訊いたところ、2Fの奥の場所にスペースを作って行うんだと。
一旦店を出て、当初の予定通り道の反対側にある松屋へ。地元にも松屋はあるが車で1時間くらいかかるのでまだ行ったことがない。牛丼チェーンの中では一番好きだったので久しぶりに食べてみようと思っていたのである。大盛を食べたが安いから仕方ないとは言え肉の量が貧弱で下の白米見えすぎ。すき家の特盛の方がいい。味はにんにく効き過ぎ。何を誤魔化す必要がって感じ。あとバイトは私語多すぎ。牛丼屋はもっと殺伐としているべき。でもまあこんなもんだよね。そこそこ満足。

18:00

その辺りを徘徊。あんまり寒くないのは風がないからか。歩いている人がいっぱいいるのに違和感を覚える。田舎で道を歩いてるのは年寄りか子供か外国人しかいない。アウェイ感再び。ぐるっと回って地下道を横断しヒルズの2F通路へ出る。ライトアップされた東京タワーが夜空にくっきりと浮かびあがり絵はがきのような光景が現出。季節がよければデートには最適ですって感じ。裏通りを通って一度店の後ろを通りすぎ、またぐるっと回って店の前へ。近くにあおい書店とTSUTAYAがあった。

18:10

店内を物色。3Fは芸術関係(絵画・写真・音楽など)が強く、その片隅にコミック売場が控えめにある。スペースの小ささと品数の少なさに驚いた。ジャンプコミックスの発売日なのに平積みされていたのは『BLEACH』ともう1冊(忘れた)のみ。つかジャンプコミックス自体ほとんど置いてない。女性・青年向け中心で棚のゴールデンラインにはなぜか徳間のRYUコミックスが置いてあるという、『ONE PIECE』が読みたければTSUTAYAへ行け、と言わんばかりの品揃え。『ONE PIECEぴあ』と映画『STRONG WORLD』の設定資料集は平積みされてたけど。
コミックにはビニールが巻いてないので立ち読み人が立ちふさがって棚が見にくく通路も狭いのでじっくり観察することは断念したが、中規模郊外店のうちとは全く異なる客層をターゲットにした棚はとても興味深かった。商品の選別と棚の並べ方はどういう意図に基づいているんだろうとか、コミックの売り上げは全体の何パーセントくらいなんだろうとかが気になる。
その後文芸書売場へ。「SF漫談」絡みで一コーナーが設けられており、新井素子さんの作品と本日の司会者大森望の著書・アンソロジーがテーブルの上に並べられていた。『もいちどあなたにあいたいな』はもちろん平積み。店内文芸書ランキングでは伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』を抑え『もいちどあなたにあいたいな』が堂々の1位! イベント絡みで瞬間最大風速が観測されていた模様。
売場には「オトナの知的好奇心をくすぐる」系の本が多く平積みされている。文庫では岩波・河出・ちくまの充実ぶりが目を引いた。河口慧海チベット関係の文庫が何種類か平積みされていたが、あれは何かの特集絡みなのか、それとも担当者の趣味なのか。こういう独自の特色を前面に押し出した書店は見ているだけで楽しくて好きだ。

18:32

ハヤカワ・創元の棚へ移動しようとしてふと腕時計を見るとあかいくつさんの到着予定時間ギリギリ。まだ全然店内は見終わっていないが慌てて店の外へ。程なくあかいくつさん到着。お待たせすることにならなくてよかった。あかいくつさんとは初対面だがすぐにわかった。
店内に入りイベント予定地へ行ってみると、文庫売場にいた時には気付かなかったがその横のスペースにテーブルといすが2セット置いてある。たぶんここに新井素子さんがお座りになられるのだろう。その付近に既に10人くらいが整然と並んで立っていた。全員女性。年齢層はよく判らないがたぶんみんな30代以降。女性の外見から年を当てるのは俺には無理なので違っていたらすいません。場所が狭いので話者と客の距離がゼロ。近すぎ。あかいくつさんと立ち話をしながら待っていると店員さんが椅子を並べ始めた。数は10脚程。フルーツバスケットの如く即座に席が埋まる。あとの人は周りで立ち見。店内放送でイベントの告知が何回か行われ、だんだん人が集まってくる。
”出版社さんのご厚意で”イベント限定アイテムとして『波』2月号に掲載された新井素子×有川浩対談のページをそのまま抜き出した小冊子が配布された。『波』との違いはノンブルが振られていないこと。配布時に「大学でレジュメを配る要領で」と店員さん。手渡しで回す。nakaさん用に一つ余分に取ればよかったがそこまで気が回らず自分の分しかゲットしなかった。申し訳ない。

19:00頃

新井素子大森望ご両人が登場。新井素子さんが向かって左のテーブル、大森望が向かって右。二人ともマイクを持って話している。俺とあかいくつさんは文庫売場の棚の前、正面に向かって左側。新井素子さんとの距離は2mくらい。マイクがなくても肉声で充分きこえる距離。新井素子さんと何度か目が合ってドキドキする。棚の間の通路からも数人が見ている。全体では目算だと50人くらいか。圧倒的に女性が多い。あと年齢層はやはり高めでスーツ率高し。
トークの中で新井素子大森望両氏が「あれはどうだっけ?」的に悩んでいる時に思わず口出ししそうになってやめるということが何度も。『ハッピー・バースディ』と『もいちどあなたにあいたいな』の間に長編小説はあったか、という話題の時に「ブラック……」とつい言ってしまって慌てて口を閉じる。ちとむずむずしていた。
イベントの模様は下記リンクから参照されたい。

20:00頃

サイン会へ突入。大森望も一緒にやるのかと思っていたが新井素子さんのみ。テーブルを一つ片づけて場を整え、お客さんを整理して、スタッフが新井素子さんの周囲を固める。整理番号の昇順に10人ずつが並ぶ方式。あかいくつさんは3番。俺は13番。名前を書いて欲しい人は整理券の裏に書いておいて下さい、と店員さんがボールペンを持って回っていたので、借りて書いておく。緊張は極限にまで高まっていた。
自分の番になり新井素子さんに声を掛けて頂いたことに舞い上がって正直細部はあまり覚えていないが、自己紹介したら「お世話になっております」と頭を下げられて大変恐縮し思わず土下座しそうになった。ご友人がよく素研のサイトをご覧になっている、とか「私よりも私の予定をよく知っている」とも言って頂いたような気がする。新井素子さんは各人にいちいち立ち上がって握手をして下さっており、俺も握手して頂いて感激の至り。この時の俺の失態については上の日記に書いた通り。う〜。
サインを頂いたのでそそくさと店を後に。後から考えると、大森望のサインももらっておけばよかったとか、サイン会の様子をもっと見ておけばよかったとか、ネットでお世話になっている人を捜してみればよかったとか、色々と悔やんだのであるがその時はいっぱいいっぱいでそんな余裕はなかった。あかいくつさんと、ちょっとお話でも、ということになり、品川駅へ移動。電車の中でも興奮冷めやらず心ここにあらずといった呈。

20:30頃

品川駅着。掛川駅に止まる新幹線は21:51までない。あかいくつさんは品川方面でお仕事をしていたことがあり駅構内にも通じているご様子。カフェで21:30ちょい過ぎまで歓談。話している内にようやく落ち着いた。あかいくつさんには夕食もまだなのに遅くまでお付き合い頂いてありがたかった。

21:51

新幹線こだまに乗車。サイン会の時の自分の振る舞いを思い出して深く恥じ入り、この世から消えてしまいたいとずっと思っていた。

23:50

帰宅。運転していた車の中で凍死しそうになる。気付け用にコンビニで買った焼酎を飲みながらネットをチェックし日記を書いていたら気付けば26:00。風呂に入り寝る。
新井素子さんのトーク、サイン会、あかいくつさんとの歓談、自分の失敗も含めて最高にエキサイティングな一日だった。