藤津亮太さんの講座「アニメ映画を読む 『風の谷のナウシカ』」を聞いてきた。

静岡より帰宅。SBS学苑パルシェ校で開催された藤津亮太さんの講座「アニメ映画を読む」を聞いてきた。今回取り上げた作品は『風の谷のナウシカ』。席がほとんど埋まる程の盛況となった。俺は2度目の聴講だが今回も楽しかった。
印象に残った話。映画公開後に刊行されたロマンアルバムでプロデューサーの高畑勲ナウシカについて、プロデューサーとしては興行的にも成功したし満点だが宮崎駿の友人としては30点、という発言をしていたらしく、それをずっと気にしていた宮崎監督(発言を聞いて怒ったらしい)が一つの回答として創り上げたのが漫画版ナウシカと『もののけ姫』なのではないか、という見方が提示された。個人的に『もののけ姫』を見てこれって漫画版ナウシカじゃん、と強烈に思ったことを思い出した。講座終了後に出席者の方と話していて、漫画版ナウシカを日本の神話的世界に落とし込んだのが『もののけ姫』だ、という意見を聞き、かの発言から漫画ナウシカ、『もののけ姫』へと続く一連の流れが見えて何かストンと腑に落ちた気がした。そうか漫画版ナウシカを映像作品として昇華したのが『もののけ姫』と考えることもできるのかと納得がいったのだった。
(関係ないが行きの電車の中では漫画版『風の谷のナウシカ』の最終7巻を読んでいて、全ての業を引き受けてそれでもみんなに生きねばと語りかけるナウシカの強い覚悟にまた感動して思わず涙を流してしまった。)
講座終了後は例によって銀座ライオンで講師の藤津さんを囲む懇親会が行われた。楽しい話を聞いた上にまた歓談しながら飲むビールが極上にうまい。みんな思い思いに藤津さんにアニメの話を伺っているし席によっては関係ない話で盛り上がっていたりもする。静岡大学の教授と一緒に学生2名(女性)が参加していたので、お一人に最近の若い人はどんな本に興味を持っているのか訊いてみると気がつけば現役大学生によるBL講座へと発展していた。曰く、Pixivを見ると次に来る作品が判る/愛好者にはなかよし→花とゆめ→BLADE→ジャンプという流れがある/花とゆめの隣にはBLADEを置け/BLの趣味は『花とゆめ』が分岐点/『ダイヤのA』はちょっとタイミングを逃した感じ/SBSの近くにある書店のコミック売り場はBLの充実度がすごい*1、など。知らない分野の話なので一々興味深い。目から鱗がぼろぼろ落ちる思いがして大変参考になった。その話をSBS学苑でやったら絶対聞きに行くけどなあ。
そんな訳でいろんな年代の人が来てるから聞ける話というのもあって、アニメの話もそうだし普段の生活ではまず口にする機会がない話で盛り上がれるのがこの懇親会のいい処であるとすごく感じている。今日の場合は講座が90分で懇親会が約180分という時間配分も恐ろしいがその内全く退屈する隙がないという充実度。三度繰り返すが楽しいったらありゃしない。たまに大学時代の友人と会った時くらいしかリミッターを外した会話はできないもので、こういう場が存在するというのは実にありがたいのです。相手をして下さった藤津さんや出席者の方々、ありがとうございました。
次回の「アニメ映画を読む」は7月27日(日)、『言の葉の庭』と新海誠作品を取り上げるそうである。新海誠の作品は全然見たことないんだけど、漫画も出てるし見たり読んだりして行ってみようか知らんと今ちょっと悩んでいる*2

*1:その書店ではコミックスとそのBL作品が並べて置いてあるんだって。BLにハマったきっかけが、元々のその漫画が好きでたまたま本屋で関連作品かと思って手にとった、というのは多いんだそうで、販売手法として目から鱗が落ちた思いがした。一般向け漫画と特殊な趣味人向けの漫画の間に垣根を作るのは売る側の意識の問題だったのかと。ではうちの店でやれるのか、というと考え込まざるをえないが。

*2:いやまあ結局行ってみようかと思い始めたんです。→ 「新海誠作品のDVD、コミック、小説にはどんなものがあるのかメモ。」http://d.hatena.ne.jp/akapon/20140501#p1