- 横溝正史自選集〈6〉悪魔の手毬唄
- 戦国コミケ (4) (ジーンピクシブシリーズ)
- 天下一蹴 今川氏真無用剣 (2) (完) (ヤングガンガンコミックス)
- 3月のライオン (15) (ヤングアニマルコミックス)
- むちむちぷりん〈精選版〉 (徳間文庫)
- 成城だよりIII (中公文庫)
- 星界の紋章 (7) (メテオCOMICS)
- 銀河英雄伝説 (15) (ヤングジャンプコミックス)
- ちはやふる (43) (BE LOVE KC)
- ゆこさえ戦えば (2) (少年サンデーコミックス)
- 新井素子SF&ファンタジーコレクション3 ラビリンス〈迷宮〉 ディアナ・ディア・ディアス
- 田島列島短編集 ごあいさつ (モーニング KC)
- 水は海に向かって流れる (2) (KCデラックス)
- 小路花唄 (4) (アフタヌーンKC)
- すべての人類を破壊する。それらは再生できない。 (2) (角川コミックス・エース)
天下一蹴 今川氏真無用剣 (2) (完) (ヤングガンガンコミックス)
読了日:12月27日 著者:湯野由之,蝸牛くも

天下一蹴 -今川氏真無用剣-(2)(完) (ヤングガンガンコミックス)
- 作者:蝸牛 くも,湯野 由之
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2019/12/25
- メディア: コミック
むちむちぷりん〈精選版〉 (徳間文庫)
宇能鴻一郎の女性告白体小説にかねてより興味があったのだが『成城だよりIII』の新井素子文体への言及を読んで急速に比較してみたいという気分が盛り上がったので読んでみた。「あたし」一人称、一文の短さ、改行・体言止め・助詞止め・接続詞止めの多用、格助詞の省略、独特の擬音、などが特徴と見る。新井素子文体との共通点はいくつもあるが当然のことながら印象は全く違う。これだけページの下が白いとむしろ夢枕獏や火浦功の小説を思い出した。作家が意識的に速く読める文体を作ろうと思ったらこれらの諸技術に到達するのは必然なりや。
ちなみに新井素子さんは宇能鴻一郎文体にも言及していて平井和正との対談(『ウルフ対談』所収)にこのような会話が掲載されている。「平井 素子ちゃんが突如すごいポルノ小説を書き始めたなんて。(笑)そういうのわりと期待してる人がいたりして。(笑)/新井 よく言われるんだけど、文体が似てますので、私がもしそういうの書き始めると、きっと宇能鴻一郎さんと区別が付かなくなります。(笑)」もちろん冗談なんだけどご本人による宇能鴻一郎文体への認識を示す一例として挙げておく。
ソフトポルノ小説7編が収録された連作短編集で最初の短編では告白体にまだ固さが見られるが書き進むにつれて段々と技巧が発達して行き滑らかになっているように感じた。特に「残らされて」のドライブ感はすごい。宇能鴻一郎が告白体で書いているのはこの一作のみに非ずその成立と発展の過程にも興味があるんだが誰か調べてる人いないのか知らん。
読了日:12月22日 著者:宇能鴻一郎
成城だよりIII (中公文庫)
1985年の日記なので覚えていることも多く読んでいて楽しかった。新井素子ファン的には1985年と言えば「阪神が、勝ってしまった。」年であり本文中でも野球好きの著者が強い阪神に言及しているのだがその優勝については全く触れていないのはいっそ清々しかった。
二月八日の記(P.39~)に小学生のお孫さんの読む少女漫画についての考察があり関連してやはりお孫さんがファンだという新井素子さんの小説の文体についての言及がある。「従って新文学が筋と場面転換と心理描写までマンガのコマを真似て小説を書いてもなにも悪いことはない。十六歳にしてSF小説『あたしの中の……』を書きし新井素子の「えっと、あとがきです」の如き口演(「語」に非ず)体生ず。」口演体という言葉は知らなかったのでこの指摘は興味深い。落語の口演速記本など出ているようで確認してみようと思う。
「ずれ」を引いて「この文章の句点に区切られた部分は、少なくとも私には、マンガの一コマとして空想さる。新井だけではなく、多くの新作家マンガ小説書きつつあり。」とあるがどうかねえ。そこまで明確に比定できないような気も。演出(漫画の文法/作家の個性)の問題という気もするし。「そして瞭子はむろん新井素子のファンにして、赤川次郎の『探偵物語』も読む。(少し早熟らしく基準にならないかも知れない)」1985年時点での小学生ファンの存在を証言するものとして記録しておきたい。
読了日:12月22日 著者:大岡昇平
星界の紋章 (7) (メテオCOMICS)

- 作者:森岡 浩之
- 出版社/メーカー: フレックスコミックス
- 発売日: 2019/12/19
- メディア: コミック
新井素子SF&ファンタジーコレクション3 ラビリンス〈迷宮〉 ディアナ・ディア・ディアス
完結巻。この巻には長編作品「ラビリンス〈迷宮〉」、「ディアナ・ディア・ディアス」の他に「週に一度のお食事を」、「宇宙魚顛末記」も収録。久しぶりに読み返した二長編の傑作ぶりに改めて驚嘆した。読んでいるこちらの心身を容赦なく抉ってくる感じがたまらない。恒例の収録作既刊全あとがきを読むと、「扉を開けて」も含むあちらの世界の壮大な物語構想の一端を窺い知ることができ、それ故「ディアナ・ディア・ディアス」の後の物語が読めないものだろうかとあの頃感じた切なさがまた蘇ってしまい、そんな自分に苦笑したのであった。
素研をやっている立場からすれば新井素子作品が再評価されるのは必然だとずっと信じてきたけれども、2019年の今初期作品がこのような素晴らしい編集で書籍として刊行されたことに対して、なんだか報われたような気持ちにもなった。読んでいて実に楽しかったし、今だから判る新しい発見があったりもして、このコレクションを読むことができて本当にうれしかった。編者の日下三蔵氏に限りない感謝の念を贈りたい。編者解説では謝辞まで頂いてしまい恐縮の至りでございました。