莫迦。

ふと思いついたのでメモ。
新井素子の書く文章では「ばか」を「莫迦」と表記する。「迦」のしんにょうは点二つだが、常用漢字・人名漢字では点がひとつの字を用いる。

●『広辞苑』第五版より。

ばか【馬鹿・莫迦
梵語moha(慕何)、すなわち無知の意からか。古くは僧侶の隠語。「馬鹿」は当て字〉

●『岩波仏教辞典』より。

馬鹿 ばか
語源ははっきりしないが,無知とか迷妄を意味するサンスクリット語mohaに相当する音写語かともされる.このサンスクリット語の確かな音写語として〈莫迦〉がある.また一説に,漢語〈破家〉(家産を破る意)の転義とも.いずれにしても,愚かさを意味していることに変わりはない.ただし,本来〈年老いた〉を意味するサンスクリット語のmahallakaを語源とする説は信用しがたい.なお,古くは寺家の隠語的なものだったらしく,用例としては鎌倉時代末を溯るものが見当たらない.「此の塔頭の辺をば大覚谷と云ひて,人多くして好き僧も馬嫁(ばか)も多かったと云ふぞ」[蕉窓夜話]

つまり、語源ははっきりしないが、サンスクリット語のmohaが語源らしく、それに字を当てたのが「莫迦」とか「馬鹿」だと思われる、と。中国由来か日本オリジナルかは上記の文章からは判らない。サンスクリット語の"e","o"は長音である。mohaは「モーハ」と発音する。
俺は大抵の場合「馬鹿」を用いる。新井素子の小説は耽読した癖になぜ真似をしなかったかはよく覚えていない。新井素子さんの真似をするのは恐れ多いと思ったか、「馬鹿」の方が自分が抱く「ばか」のイメージに近いと思ったか、どちらかのような気がする。