今にして思えば。

この同級生というのが、学校帰りに本屋で『通りすがりのレイディ』を見つけ新井素子の新刊出てる! と勇んでレジに持って行こうとした処でばったりと出会い俺の手の中にあったのその本の表紙を見て「お前ロマンチックって顔かよ~」とからかった人物である。コバルト文庫の『星へ行く船シリーズ』には表紙と背表紙に「ロマンチックSF」と書いてあったのだった。
しかし、今にして思えばプシキャットの話題をわざわざ俺に振ってくるなど、彼は新井素子ファンだったのではないか。プシキャットは「大きな壁の中と外」の登場人物であるので、少なくとも自発的に『あたしの中の……』は読んでいた筈である。プシキャットの話はこれまでずっと不愉快な思い出として頭の中に蘇ってきていたものだが、そう思えば受け取り方も変わってくる。
38年前のあの時に新井素子作品の話題で盛り上がっていたら、俺にとっても彼にとっても思い出はより豊かなものになっていたのかも知れない。もっとも相手の気持を察することもできないボンクラ中学生にそんな気の利いたことなどできる訳がなかったんだが。ということまで含めていささか感傷的な気分になる。
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