新井素子関連文献その2。

星から来た船(中)』P.197に「般若心経」が引用されている。

「観自在菩薩行深般若波羅密多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空……」
 今度は真樹子さんに教えてもらわなくても判る。これ……般若心経だ。
(中略)
「羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆詞 般若心経」

1992年5月10日発行の第1刷からの抜き書きだが、「般若波羅密」の「密」は誤りで正しくは「蜜」である*1。もうひとつ、「薩婆詞」は「薩婆訶」が正しい*2。字の形が似ているから間違えたのかもしれない。岩波文庫版(玄奘三蔵訳)などでは読みやすくするために句読点で経文を区切っているが、この文にはない。最後の部分が「般若波羅蜜多心経」でなく「般若心経」なのは俗っぽい*3新井素子さんが引用した原典は何だろうか。これも謎である。

*1:大学の入試で同じ間違いをしたのはわたしです。東洋大学文学部の日本史の問題で、答えの「六波羅蜜寺」を「六波羅密寺」と書き間違えたのである。印度哲学科を受けてるのにこれはねーよなーと落ち込んだのを強烈に覚えている。受かったからいいんだけどさ。

*2:岩波文庫玄奘三蔵訳)の読み下し文では「掲帝 掲帝 般羅掲帝 般羅僧掲帝 菩提僧莎訶」の字が当てられている。

*3:単にタイトルが後ろに書いてあるだけではないのはサンスクリット語の原文と付き合わせれば判る。略せばいいってもんでもない。