久美沙織『コバルト風雲録』。

読了。「このライトノベルがすごい!」で連載されたエッセイ「創世記」が加筆訂正削除タイトル変更の上出版された本である。筆者がどのように作家稼業に取り組んできたかを赤裸々に描いた内容に圧倒される。読みながらなぜか頭の中に大黒摩季の「夏が来る」が流れてきたり、思い込みの強さと思い入れの深さに辟易したりもしたのだが、とにかく異様な迫力に満ちている。熱気と魂(soul)が文面から陽炎のように立ち昇ってくるのである。
新井素子さんの名前が書いてあるページに付箋を貼っていったら最終的に14枚になった。この内1枚は「第4章 輝く鬼才・新井素子」のタイトルページに貼ったものであり、まるまる1章(14/285ページ)を新井素子さんの話題に割いているため実際には名前が書かれたページはもう少し多い。
ちなみに、web版に掲載された新井素子さんご本人による番外編「新井素子の感想文」は収録されていない。感想文内で新井素子さんは色々とつっこみを入れているのだが、それが本文に反映されてもいないようだ。ちょっと残念。俺が新井素子ファンだから言うんではなくて、そのような周辺の話題をも組み込むことによって、多角的な視点を読者に提供し更に本の内容に深みを持たせることが出来たんじゃなかろうかとちょっと思ったのである。まあしかし、この本は何しろ久美沙織の”一代記”であるのだ。多角的な視点なんざ無い方がまとめて読む分には面白いのも確かだろうと思う。だから文句は言わない。
つっこみ。
P.69、野田昌宏の名前が「野田昌弘」となっている。単純に誤記かと思ってネットで検索してみると「野田昌弘」がけっこう見つかって驚いた。この筆名を大元帥が使っていた記憶はないんだが、俺が知らないだけだったんだろうか。つーか、これってやっぱり間違いでしょ。