有川浩『クジラの彼』。

自店にて購入。ベタベタで甘甘の恋愛小説集だが一風変わっているのはその全てに自衛隊が関わっている処である。民間人には窺い知るよしもないその内部や隊員の人間模様がアクセントとなり微笑ましい恋愛譚が描かれる。長篇『空の中』『海の底』の番外編も収録されていて、既読者には更に楽しく読めること請け合い。俺ももう楽しくてニヤニヤしながらながらあっという間に読み終わったものである。夢枕獏のハードカバーは買わなくても有川浩のは買ってしまう、そのくらい今読むのが楽しい。
あと、あとがきに新井素子さん関連の記述があった。P.242より。

つーか、マジで「活字でベタ甘」が好きやきしょうがないろうがえ。『星へ行く船』のあゆみちゃんと太一郎さんのつかず離れずのドキドキも、『妖精作戦』の榊とノブのファーストキスも、『大きな森の小さな家』シリーズのローラとアルマンゾも『赤毛のアン』も『あしながおじさん』も活字やったからこそあれだけ胸キュンやったがやとここに断言す!

星へ行く船』とは言わずと知れた新井素子さんの代表的小説シリーズである。有川浩新井素子作品の愛読者であったということはあちこちで語られているので、ここで『星へ行く船』が登場するのは全然不思議なことじゃない。そう言えば「ファイターパイロットの君」で、母が自分のことが嫌いなのかと訝る小さな娘に、父が大切な仕事をあえて中断してまで産んだことを教え諭す件など『カレンダー・ガール』を思い出した。