読売新聞5月7日夕刊、有川浩特集。

第10面と11面の「Pop Style」で有川浩が大きく取り上げられている。新井素子さんの影響はこれまで何度も語られているけれども、ここでも名前が登場しているので文章をそのまま転載してみよう。第11面より。

●素子さんにあこがれ
読書の自由が奪われた世界で、本を守る者と検閲サイドとの間で繰り広げられる戦闘を描く「図書館戦争」シリーズ。レイ・ブラッドベリの名作「華氏451度」や、ドイツ・ナチスの「クリスタルナハト」などを連想してしまうが――。
何と、おなかを抱えて「くっ、くっ」と笑い出した。「皆さん、だいぶ買いかぶっているみたいなんですよね、私のこと」
自作を難解な言葉で批評されると閉口する、という。「全然、意味が分からないんですもん」。「華氏451度」も読んではいない。「読者からはよく関連性を指摘されるんですけど……」。海外SFで読んだのは唯一、「夏への扉」だけだそうだ。
だが、それで気後れすることはみじんもない。「物を知らないのが、書き手としての自分の最大の武器」とキッパリ。「知らなければ知らないだけ、『初めて知った喜び』を味わえるでしょ」
海外SFこそ読まなかったが、保育園のころからお話を書き、乱読を続けてきた。最も強く影響を受けた作家は新井素子。「素子さんは古風で、不思議な言葉の使い方をする。それがまた絶妙にうまい」
そう語る有川も、作品中に「中っ腹」「たたらを踏む」「命数が尽きる」といった、若者には注釈が必要な表現を好んで使い、しかもうまくハマっている。
17歳でデビューした”新井師匠”にあこがれて、様々な賞に応募を始めたのは高校から大学生のころ。読んでくれた友人の評判は悪くなかった。
しかし、最終選考まで残っても、その上に行けない。「勢いは良いけど粗い」――審査員の選評はいつもそんな調子。
「(はしごの)上の段に指1本だけひっかかってぶらさがっているけど、上にはあがれない人間なんだなって思って、自分の将来をいったん見切っちゃった」

「古風」な言葉の使い方というのは例えば「馬鹿」を「莫迦」と書いたり台詞が江戸弁のようになったりする等は俺も感じていたが、あまり注意して読んでいなかった。読み返す時は気を付けてみよう。それを「不思議な使い方をする」と感じるのは作家ならではの感性か。
こうして新井素子さんの話題を出してくれるのはファンにとってはうれしいことである。読んだことがない人でも、どんな作家なんだろうと関心を持ってくれればうれしいのだが。

関連ページ(YOMIURI ONLINE)。

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自著のあとがきで新井素子作品に触れている箇所。

新井素子さんの本の解説も書いている。