新井素子関連文献その4。

ついでに歌を一首挙げておこう。『星から来た船(中)』P.81より、水沢所長と山崎太一郎の会話。

「何だよ。……俺、別に水沢さん、あんたのことを頼りにしてるだなんて、これっぽっちも言ってないぜ」
「色にでにけりってな。今日来るとは思っていなかった俺のことを、わざわざおまえ、ゲートの処にはりついて、ずっと待っててくれた訳だ。これで、”待たれていない”って思う奴は、なかなかいねえんじゃねえか?」

「色にでにけり」で思い出すのは平兼盛の歌だ。

忍ぶれど色に出でにけり我が恋は 物や思ふと人の問ふまで

通りすがりのレイディ』に出てきた「いかに久しきものとかは知る」の歌と同じく百人一首に収められている。歌では「でにけり」でなく「いでにけり」なのが違う所である。