西澤保彦『箱船は冬の国へ』

読了。二回泣いた。そういう話ではないような気もする。どうも涙もろくていけない。
ミステリというのかパズラーというのか、この手の話に免疫がないせいか、最初からいきなり引き込まれて、次はどうなるんだ、次は、と思っているうちに、いつのまにか読み切ってしまった。……しかし、内容について書こうとすると、何を書いてもネタばれになりそうでうーむと考え込んでしまうのであった。その点、新井素子さんの推薦文はその辺りをうまく避けてこの話の肝要なところを紹介しているし、しかもそれが新井素子の文章になっている。プロの作家の技量は凄い、などと感心してしまった。そうそう、この本は帯のコメントと背表紙の推薦文を新井素子さんが書いているのである。あとがきに作者から新井素子さんへのお礼の言葉も書いてあった。そのような情報を事前に得ていたので読んでみた、という不純な動機から読んでみたのだが、読んでよかったと素直に心から思った。
あと、読みながらこのイラストってなんかいいよなあと思っていたら、あとがきに作者が是非にとイラストレーターを指定した件が書かれていた。駒田寿郎というその名前は知らなかったのだが、作者が特に頼むだけあって話によくはまっている。読んでいる時に、イラストに触発されて頭の中にイメージがどんどん広がっていくのである。小説とイラストの幸せな組み合わせをそこに見たと思った。
楽しい時間を過ごさせてもらった。ありがとうございました。