有川浩の小説を読んだ。

塩の街 wish on my precious』

Scene-1.とScene-2で泣いた。ボロボロ泣いた。新井素子ひとめあなたに…』や神林長平『抱いて熱く』のように、終わりつつある世界の中でそれでも生きている人々の情景が切なく描かれている。切ないにも程がある。この調子で最後まで読んだら泣き死ぬな、と思いながら読み進めると話は途中から主人公達が世界を救う方向へと傾いていき、恋愛模様も絡まって大盛り上がりのうちに終了する。個人的な好みとしては、あのまま救われない話でもよかったのだが、それをすると「ライトノベル」ではなく「SF」になってしまうのかもしれない。とか適当なことを抜かしてみる。未だに「ライトノベル」ってよく判らないが、この作品はとても面白かった。

『空の中』

そもそも有川浩の小説を読んだのは新井素子さんがこの本を連載エッセイ「読書の缶詰」で取り上げていたからだった(『pumpkin』2005年4月号。 - 雑録)。新井素子さんが薦めているくらいだし『塩の街』を読み終わった後で作者の力量には感服したので、きっと面白いんだろうとは思っていたんだが、それにしても予想以上だった。未知の生命体とのファーストコンタクトとそれを取り巻く人間模様が精密な筆致で描かれるのが凄い。登場人物達の悲しみ、悩み、戸惑いなどの感情が読んでいるこちらの中に自然に入り込んで来るのも凄い。読後感が実に気持ちがいいのも凄い。掛け値なしにいい話。
最初のパイロットのお父さんのあの最期があまりに壮絶で現世に未練を残していそうだったので、後で別の形で再登場してくるのかなあと思っていたのだが、それはちと気の回しすぎだった。些細なこっちの事情である。

物語の締めが「Fin.」なのが何気に新井素子さんぽいと思った。