高井信『ショートショートの世界』。

読了。購入本。今年のホシヅルの日に、新井素子さんが星新一の墓前に供えた本である*1
本の冒頭には「星新一氏に捧ぐ」と献辞があり、”ショートショートの神様”と呼ばれた星新一の功績が本文中でもかなりのページを割いて語られている。自身もショートショートでデビューした著者が、その定義や歴史、日本での展開、そして書き方までを詳細かつ平明に解説しており、あまりショートショートを読んだことのない俺でも面白く読めた。日本におけるショートショートの普及に小林信彦中原弓彦)が関わっていたというのも興味深かった。資料価値の高い本でもあると思う。
本文中に新井素子さんの名前は登場してこないが、作品を発表した『ショートショートランド』創刊号『SFワールド』創刊号の書影がP.119掲載されている。SFと言えばショートショートのことだった、という時代があったようである。考えてみれば新井素子さんのデビュー後第一作*2「ずれ」は、『いんなあとりっぷ』に掲載されたショートショートであった。長編型の作家であるように思われがちな新井素子さんだが、デビュー後の3年間には他にも「週に一度のお食事を」(『小説春秋』1980年7月5日号)や、「チューリップさん物語」(『ショートショートランド』創刊号)、「眠い、ねむうい、由紀子」(『PHP増刊号』1981年10月号)などのショートショートを書いていた。SF作家の活躍できる場がそこにはあったということを示す例と言えるだろうか。

ちなみに、新井素子さんと著者は1999年10月2日、大阪シナリオ学校が主催する公開講座で対談をしている。「小説の創り方 長編vs短編」というタイトルだったようである*3
著者との関連では、他に『わらべうた殺人事件』(安田均高井信富士見ファンタジア文庫)で新井素子さんが解説を書いている。高井信の著作を読んでテーブルトークRPGを知った経緯などが書かれている。

*1:太田忠司不定期日記】http://ohta.way-nifty.com/diary/2005/09/post_1011.html

*2:正確には依頼があったのはデビュー前。

*3:【未来学妄想ノート】SF作家公開対談見物記:http://www.asahi-net.or.jp/~ft1t-ocai/jgk/Jgk/Public/Other/Kurokawa/Law/law-10.html