ラリイ・ニーヴン『時間外世界』。

読了。古本屋にて購入。大学1年時のSF研の読書会で『リングワールド』を読んで以来のラリイ・ニーヴンである。読後感はその時とほぼ同じ。大がかりな仕掛けや奇抜なアイデアが散りばめられた豪華な小説であるが、だからどうしたと言いたくなる。話自体つまらなくはないが格別に面白いという訳でもない。ニーヴンとは相性が悪いようだ。あと、大野万紀の解説では「テンポのいい平易な文章」と書いてあるのだが、これは原文の話なのかね。訳文は日本語がこなれていなくて非常に読みづらいと思った。
で、何故読んだのかと言えば、新井素子ファンにはすっかりおなじみのキャットテイルはこの小説に登場する動物だからなのだ。基礎知識として確認しておこうと思った次第。本文中からキャットテイルに関する描写を拾ってみよう。

それは蛇、ふとっていてふさふさした蛇だった。S字形にカーブを描いて、かれに向かってすべってきた。ふさふさした気の色は、黒と灰色と白のだんだらだった。それはとまり、美しい猫族の顔をあげると、また猫のように、たずねた。「ミャーウ?」

かれらは名詞を交換した。ミレリイ・ライラがなにかを指さし、名前をいうと、コーベルがそれにあたる名詞を答えた。部屋のなかには、かれが名前を知らないものがたくさんあった。
「猫(キャット)=尻尾(テイル)」とかれは毛の生えた蛇を呼んだ。〈電話ボックス〉は、瞬間移動ブースのことだった。

コーベルは、そいつの耳のうしろをかいてやった。キャット=テイルは、半分目をとじ、ごろごろとのどを鳴らした。そいつの腹部は、蛇のようにうろこのある堅い皮革だったが、ふさふさした毛は見かけどおり豪華な手ざわりだった。

かれらはコーベルを観察していた。厳粛な猫の顔をもつ三匹の蛇、茶色とオレンジ色の複雑な模様の毛がふさふさと生えている。まるで三つのバタースコッチ・サンデーのように美しい。コーベルは微笑し、愛想のいい手まねをした。まるでそれがわかったように、かれらはまた肉にとりかかった。

「キャット=テイル」というのが正式な書き方らしい。まあ固いことはいいか。これをぬいぐるみにしようと思った人がいるというのが凄いのである。
昔のインタビューや対談によると新井素子さんは海外SFをあまり読まないらしいが、ラリイ・ニーヴンの作品は読んだことがあるようだ。少なくとも『・・・・・絶句』には「リングワールド」という名詞が登場するし、『そして、星へ行く船』でもニーヴンと『リングワールド』の内容について触れている。『時間外世界』も読んだのであろうか? 気になる処である。

  • 『時間外世界』,ラリイ・ニーヴン,ハヤカワ文庫SF,540円,ISBN:4150106533